戦争拡大を画策するイラン、強硬派が戦略転換テヘランにある反米プロパガンダの掲示物 ABEDIN TAHERKENAREH/EPA/SHUTTERSTOCK

 ドナルド・トランプ米大統領が6月中旬にイランとの覚書に署名した後、政権幹部らはホルムズ海峡の開放と戦争終結への道を開くことを期待して、この合意への支持を取り付けようと奔走した。

 イランとアラブ諸国の当局者によると、イランの強硬派指導部はテヘランに集まり、別の計画を立案した。彼らの見解では、この合意は米国とイスラエルが世界経済への圧力を緩和し、大規模な攻撃に向けた時間稼ぎに過ぎない可能性が高い。彼らは交渉には期待せず、この2カ月間をより大規模な戦闘の準備に費やした。

 その取り組みには、正規軍へのより大きな統制権をイラン革命防衛隊(IRGC)に与えること、イラクとの戦争や過去の国内デモ鎮圧で経験豊富な将校を要職に任命すること、国内の防諜(ぼうちょう)活動を拡大すること、ミサイルとドローン(無人機)の生産を増強することが含まれる。指導部はすぐに主導権を握り、船舶への攻撃でホルムズ海峡に対するイランの支配を強化し、サウジアラビアがペルシャ湾に対するイランの締め付けを回避するために利用してきた紅海へと戦場を拡大した。

 アラブの情報当局によると、イエメンやイラクなどで活動する同盟民兵組織とイランの通信記録などから、イランの強硬派指導部内で戦略的な転換が進んでいることが明らかになった。戦争を拡大し、米国の負担を増やすために、部隊を準備させているという。

 イラン政府に近いテヘラン在住の防衛アナリスト、モハマド・ハッサン・サンタラシュ氏は「イランでは、本格的な戦争はまだ始まっていないという見方が広く浸透している」とし、 「これまでの状況は、より大規模な衝突の前に能力を弱体化させることを目的とした、限定的かつ段階的なエスカレーション、いわゆる『サラミ・スライシング』戦略として解釈されることが増えている」と述べた。