Photo by Yoshihisa Wada
リヒテンシュタイン公爵家のファミリーオフィスとして培ってきた知見を生かし、富裕層向けの金融サービスを提供する独立系プライベートバンク、LGTグループ。日本市場に参入してわずか5年だが、メインターゲットとする顧客層であるオーナー企業の創業家や金融業界で、徐々にその名が知られ始めている。特集『オーナー企業「上場1885社」全序列【2026年版】』の#8では、日本法人のLGTウェルスマネジメント信託の永倉義孝会長に、LGTグループとリヒテンシュタイン公爵家が持つ強み、さらに日本市場でのサービス内容について、話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
オーナー企業のもめ事増加の背景に
“日本式”ファミリーガバナンス衰退がある
――オーナー企業を所有・経営する創業家は、多額の資産を持つ富裕層でもあります。富裕層向けの金融サービスは、メガバンクは成長分野と捉えて強化しており、例えばみずほフィナンシャルグループは2024年にスイスの大手プライベートバンクであるロンバー・オディエの日本法人と提携しました。日本における富裕層向けの金融サービス市場をどう分析していますか。
日本では個人向けの営業部隊が富裕層向けサービスを担当していることが多く、そうである以上、サービス内容は投資商品の販売や相続税対策など、どうしても偏りが出てしまうのだとみています。
オーナー企業にとって、ファミリーガバナンス(*)とコーポレートガバナンスは両輪であることが基本ですが、日本ではファミリーガバナンスの概念はあまり認識されていませんでした。ただ、最近はコーポレートガバナンスの重要性が注目をされてきたことで、ファミリーガバナンスに関しても注目が集まり始めていると感じています。
*ファミリーガバナンス:コーポレートガバナンスを踏まえた上で、ステークホルダーとの協働を促し、結果として事業を継続、承継し、持続的に成長するための仕組み。(出所:経済産業省「ファミリーガバナンス・ガイダンス」)
日本では非上場企業のほとんどがオーナー企業だといわれています。また長寿企業も多く、業歴200年以上の企業は約1800社もあるなど、日本は実は世界でも有数の長寿企業大国です。この背景には、日本の家父長制があるといわれていて、家訓があり、盆暮れ正月には一族が集まって、家長から家の歴史や理念が子どもたち世代に自然に伝わっていました。それによって、家業についての共通理解が生まれていったわけです。それはファミリーガバナンスそのものでした。
ところが時代と共に家族の形も変わってきて、ファミリーガバナンスが弱まってしまった。もめ事が起こったり、オーナー企業の廃業あるいは売却が増えたりしているのは、それが要因の一つだと考えています。
――LGTグループは日本のメガバンクなどの金融機関とどのように差別化するのでしょうか。
LGTグループは、リヒテンシュタイン公国の統治家であるリヒテンシュタイン公爵家が全株式を所有しています。リヒテンシュタイン公爵家は900年間26世代にわたって、国家元首の立場や資産、血脈、哲学を継承することに成功したファミリーです。
徐々に知られ始めているとはいえ、LGTグループの知名度は日系金融機関と比べると足元にも及ばない。永倉会長はそんな中でも確実に顧客を獲得し、日本のオーナー企業一族に受け入れられつつあると自信を見せる。それは、リヒテンシュタイン公爵家がくぐり抜けてきた、歴史上の苛烈な出来事から得た資産承継のノウハウがあるからだという。LGTグループを通して、そのメソッドが日本にも浸透することになるのか。次ページで詳しく話を聞いた。







