日本のAI開発は大企業が目立つが
アメリカでは新興企業が大きな存在感

 日本の生成AI開発では、NTTや富士通などの大企業の活動が目立つ。大規模な基盤モデルの開発には、膨大な計算資源、専門人材、電力、資金が必要なため、資金力を持つ大企業が中心になっても、不思議ではない。

 しかし大企業ではないが、Sakana AIは、AI研究開発企業として、日本の必要性に対応するAI技術やサービスを開発している。ほかにも、Preferred Networks、ELYZA、ストックマークなど、AI開発に取り組む新興企業が存在する。したがって、「日本では大企業しかAIを開発していない」というわけではない。

 しかし、日本の状況は、アメリカの場合の新興企業の華々しさとは、大きく違う。

 アメリカでは、生成AIの基礎となった技術(大規模言語モデル)の多くはGoogleなどの巨大企業で生まれたものの、OpenAIやAnthropicなどの新興企業が基盤モデルやサービスの開発を進めた。

 そして、Microsoft、Amazon、Googleなどが巨額の資金やクラウド計算資源を提供してきた。

現在の株価上昇はAIによる経済活性化より
一部の有力企業への強い成長期待を反映

 市場別株価指数から確認できるのは、最近の株価上昇が市場全体に均等に広がっているわけではないということだ。

 日経平均の急上昇には、一部のAI・半導体関連企業や値がさ株の動きが大きく影響している。TOPIXの上昇率はそれより低く、スタンダード市場指数とグロース市場指数の上昇率はさらに低い。

 この事実は、AIブームの恩恵が日本経済全体に一様に及んでいるわけではないことを示唆している。

 株価指数から、中小企業における生成AIの利用状況を直接に判断することはできない。多くの中小企業は非上場であり、株価指数には含まれないからだ。

 ただ、日経平均の急上昇を見て、日本企業全体がAIによって活性化していると判断するのは早計だ。現在の株価上昇は、日本経済全体の広範な変化というより、一部の有力企業に対する強い成長期待を映している面が大きい。

 日本経済にとって重要なのは、この技術革新を一部の大企業や投資家だけのものにせず、中堅・中小企業の生産性向上や新規事業の創出へと広げていくことだ。

(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)