会社を辞め、家を売り、無線機も持たずに自作した船で航海に出た夫婦。だが、ガラパゴス沖で突如クジラに襲撃され海に投げ出された。山口周氏が「 決して寝る前に読み始めないこと。一度ページをめくってしまうと 止めるのは不可能です。」と絶賛する全米ベストセラー『極限の漂流118日間』をもとに、「人生の空虚感」についてライター照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
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多くの人が「空虚さ」を感じてしまう理由
仕事がある。趣味も、予定も、ひとりで過ごす力もある。
なのに、ふとした瞬間、「このままでいいのだろうか」と感じることがある。
忙しさの中では忘れていても、静かな時間に戻ってくるのだ。
日々のスケジュールはそれなりに埋まっている。けれど、人生そのものが満たされているとは言い切れない。
そんな感覚は、決して珍しいものではない。
なぜ、人は多くのものを持っていても、どこか空虚さを抱えてしまうのだろうか。
突如、太平洋で遭難し、118日間漂流したベイリー夫妻の衝撃の書『極限の漂流118日間』(ソフィー・エルムハースト著/村井章子訳)には、夫モーリスの結婚前の姿も描かれている。
自分の人生を誰かと共にすることなど想像もできず、頑なに孤独を貫いてきた。
「孤独な独身男の典型」だと本人も言う。
──『極限の漂流118日間』より
人生が「空虚感」で満たされる人の特徴
モーリスは、もともと家族との関係に深い距離を抱えていた。
母の葬式にも出なかったという描写からも、その孤独がその場限りのものではなく、長い間、彼の人生に影を落としていたことが伝わってくる。
けれどモーリスは、決して何も持っていない人間ではなかった。
イギリス中部のダービーで植字工として働き、長年の熟練を要する仕事で腕を磨いていた。趣味も多く、休日を埋めるものには事欠かなかった。
なのに、人生はどこか閉じていた。
ここから見えてくるのは、「ひとり時間を埋めること」と「人生が満たされること」は同じではないということだ。
人生には、はっきり不幸とは言えないのに、どこか満たされない時期がある。
どこにも向かっていないように見える時間。自分でも扱いきれない空白。その時期をどう過ごしてきたかが、やがて人生の選択につながっていくことがある。
本書は、驚くべき漂流の実話であると同時に、自分でも言葉にできなかった感覚にそっと名前を与えてくれる一冊でもある。








