世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”出口治明元APU学長。宮部みゆき氏などから絶賛されている出口氏の『哲学と宗教全史』をもとに、哲学と宗教の視点から探る「ルソーが現代人に教えてくれること」とは? ライターの照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
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どこで財布を落としたのか、まったく思い出せない
以前、お世話になった係長の送別会で、いつもよりお酒が進んだ。
帰る頃にはかなり酔っぱらってしまい、どうやって家まで帰ったのか、記憶はあいまいだった。
そして、翌朝、会社へ行く準備をしていたとき、財布がどこにもないことに気づいた。
もう戻ってこないかもしれない――。
そう思いながら一日を過ごしていると、夕方、警察から財布が届いていると連絡が来た。翌日取りに行くと、中身もそのままだった。
ルソーが教える「一般意志」の考え方とは?
誰も見ていない場面では、人は必ずしも自分の得だけを選ぶわけではない。
こうした人間のあり方を考えるうえで参考になるのが、『哲学と宗教全史』(出口治明著)で紹介されている、フランスの思想家ジャン=ジャック・ルソー(1712~1778)である。
それは自然人が本来的に持っていた、自己と他者への愛という感情を発展させたもの、とも考えられる概念です。
社会の各構成員が利己心を捨てて、公共の正義を欲する意志です。
――『哲学と宗教全史』より
ルソーは、人間を最初から争い合う存在とは考えなかった。
人はもともと、自分を大切にしながら、他者を思う心も持っていると考えた。
ただし、文明が進み、所有や貧富の差が生まれると、人は自分のものを守ろうとし、競い合うようになる。
だからこそ、社会の中で生きるには、それぞれが自分の都合だけを主張するのではなく、全体にとって何が正しいのかを考える必要がある。
ルソーはその意志を「一般意志」と考えた。
損得だけでは見えないものがある!
物事を効率やメリットで測る空気は、以前より強くなっている。
だが、社会はそれだけで成り立っているわけではない。
自分の得にならなくても、正しいほうを選ぶ人がいる。
その小さな選択の積み重ねがあるから、社会への信頼感は保たれている。
ルソーの一般意志は、私たちが当たり前だと思っている行動の中にも、社会の一員としての感覚が表れていることを教えてくれる。





