言われた仕事を完璧にこなす優秀な部下が、管理職に昇進した途端に精彩を欠く――そんな光景に心当たりはないだろうか。実はそこには、多くの組織に共通する構造的な罠が潜んでいる。本記事では、その罠の正体である「昇進のパラドックス」を解説し、出世後に無能化しないためのヒントを『[新装版]ピーターの法則』から紹介する。管理職を目指す人も、すでに部下を持つ人も必読だ。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)
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従順な部下は名将になれるか
命令に忠実で、上司の期待に完璧に応える。そんな「模範的な部下」こそが、将来の優れたリーダー候補だと思われがちだ。だが、その常識は本当に正しいのだろうか。
この疑問に半世紀以上前から明快な答えを示しているのが、本書である。ピーターの法則とは、「階層社会では、人は能力の限界まで出世し、最終的に無能レベルに達する」という組織の法則を指す。
本書の第6章では、「良き指導者たるもの、良き服従者たれ」という古い格言がなぜ誤りなのかが論じられている。本稿ではその内容をもとに、昇進で失敗しないための視点を紹介したい。
「良き服従者」神話の大嘘
本書には、指導する能力が服従する能力で決まるという理屈は、「浮かぶ能力は、沈む能力で決まる」と言うようなものだと書かれている。服従と指導は、まったく別種の能力なのだ。
著者は、事業の失敗原因を調べた調査で、「管理職のマネジメント能力が欠如している」という回答が53パーセントにのぼったと述べる。従順さで評価された人が、昇進した瞬間に指揮官の役割を求められる。ここに危険な構造的欠陥があるのだ。
昇進が引き起こす三つの問題
本書には、その典型例として陸軍のチャタース大尉の事例が登場する。彼はあらゆる命令に快く従う、すぐれた服従者として管理業務を有能にこなしてきた。
ところが少佐に昇格し、自ら率先して指揮を執る立場になると、彼は権力につきものの孤独に耐えられなくなった。部下の職場に顔を出しては雑談で仕事を邪魔し、用もないのに上官のオフィスで油を売る日々。
著者はこの事例から、指導力を発揮できない、部下の仕事の効率を低下させる、上司の時間を浪費するという三つの問題が生じたと指摘している。
つまり有能な服従者の昇進は、本人の失敗にとどまらず、組織全体の深刻な損失につながりかねないのだ。
「成功」を疑う勇気を持て
本書には、階層社会学から学ぶべき教訓は「成功ほど悲惨な失敗はない」、つまり成功は無能レベルへの一里塚だと書かれている。出世という成功が、皮肉にも無能化への入り口になるというわけだ。
この視点に立てば、私たちが問うべきは「昇進できるか」ではなく、「昇進後の役割に必要な能力は何か」だろう。
部下として優秀な自分と、指導者として求められる自分は別物だと自覚することが、無能化を防ぐ第一歩になるかもしれない。
昇進の打診を受けたとき、一度立ち止まって考えてみてはどうだろうか。その椅子は、本当にあなたの能力





