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なぜタイヤ店は、使わない季節のタイヤを預かるのか?Photo: Adobe Stock

重いタイヤを保管してもらうと、
次の交換先まで決まる理由

 スタッドレスタイヤから夏タイヤへ、夏タイヤからスタッドレスタイヤへ履き替えるとき、タイヤ店から、「外したタイヤを、次のシーズンまでお預かりしましょうか?」と案内されることがあります。

 タイヤを4本も自宅に置くには、かなりのスペースが必要です。マンションやアパートでは置き場所がなく、ベランダや玄関に保管している人もいるでしょう。

 さらに、交換のたびに重いタイヤを車へ積み込み、店舗まで運び、交換後はまた持ち帰らなければなりません。その手間を考えると、保管料を払ってでも預かってもらいたいと考える人は少なくありません。

 しかし、タイヤ店が提供しているのは、単なる「倉庫の空きスペース」ではありません。

 使わないタイヤを預かることで、次のシーズンの交換時期に再来店してもらえます。そしてタイヤの残り溝や傷、ひび割れなどを定期的に確認し、必要なタイミングで買い替えを提案できます。

 つまり、タイヤの保管サービスは、お客様の負担を減らすと同時に、半年後の来店と将来の購入機会を作る、継続的な販促の仕掛けなのです。

タイヤを預けると、
次の来店先が自然に決まる

 タイヤを自宅で保管している場合、次のシーズンにどの店で交換するかは自由です。前回とは違うタイヤ店に持ち込むことも、ガソリンスタンドや自動車用品店へ依頼することもできます。

 しかし、タイヤを店に預けると状況が変わります。

 次にそのタイヤを使うためには、まず預けた店へ連絡し、交換の予約をしなければなりません。

 あるタイヤショップの保管サービスでは、次の履き替え時には事前に店舗へ連絡し、倉庫からタイヤを移送したうえで、予約日に交換する流れになっています。

 つまり、タイヤを預かった時点で、次の来店理由と来店時期がほぼ決まるのです。

 人は、一度決めた方法をそのまま続ける傾向があります。

 特にタイヤ交換のように、どこへ依頼しても一定の手間がかかるサービスでは、新しい店を探して、料金を比較し、タイヤを移動させるより、「前回と同じ店にお願いしよう」と考えやすくなります。

 保管サービスによって、お客様はタイヤの置き場所だけでなく、「次回どこへ頼むかを考える手間」からも解放されます。

 その結果、タイヤ店は強引に再来店を促さなくても、季節が変わるたびにお客様との接点を持てるようになるのです。

半年ごとの交換が、
タイヤの状態を伝える機会になる

 タイヤは、見た目だけでは交換時期を判断しにくい商品です。

 残り溝がどのくらいあるのか、傷やひび割れがどの程度危険なのか、一般のお客様には分かりにくいことがあります。

 また、自宅で保管していると、次に使用するまでタイヤの状態を確認しない人もいるでしょう。タイヤ保管サービスでは、預かるときや履き替えるときに、タイヤの傷、残り溝、ひび割れ、空気圧などを点検する店舗があります。

 これにより、お客様は、

まだ使えると思っていたけれど、溝が少なくなっている
表面にひび割れが出ている
次のシーズン途中で交換時期を迎えそうだ

 といった事実を、専門家から具体的に説明してもらえます。

 タイヤ交換の提案は、いつ行っても同じように受け入れられるわけではありません。お客様がタイヤのことを考えていない時期に電話や広告で買い替えを勧めても、「まだ大丈夫だろう」と先送りされやすくなります。

 一方、これから実際にそのタイヤを装着するタイミングで状態を見せられると、安全に直結する自分の問題として考えられます。保管と交換を一体化することで、タイヤ店は、お客様が最も話を聞きやすいタイミングで買い替えを提案できるのです。

「預けている安心」が、
価格以外の継続理由になる

 タイヤ店同士を交換工賃や商品価格だけで比較すると、より安い店へ移るお客様もいます。

 しかし、タイヤを預けてもらうと、店との関係は単なる一回の売買ではなくなります。

自分のタイヤを管理してもらっている
次の交換時期まで覚えていてもらえる
交換時に状態を確認してもらえる

 という継続的な安心が生まれるからです。

 あるタイヤショップのタイヤ保管サービスでは、直射日光や風雨などを避けた専用倉庫で保管し、交換時にはタイヤの状態確認や空気圧調整などを行う仕組みが案内されています。

 お客様にとっては、保管場所を借りているだけでなく、タイヤの管理そのものを専門店へ任せている感覚になります。

 すると、ほかの店の交換工賃が少し安かったとしても、「自分のタイヤの状態を分かっている店に、そのまま任せたほうが安心だ」と考えやすくなります。

 価格の安さだけではなく、「管理を任せている」という関係性が、継続利用の理由になるのです。

保管料だけでなく、
交換と買い替えの売上も続いていく

 タイヤ店が保管サービスから得られるのは、保管料だけではありません。夏タイヤと冬タイヤを交換する地域では、一般的に一年に複数回の履き替えが発生します。そのたびに、タイヤ交換の工賃や点検の機会が生まれます。

 さらに、タイヤが摩耗・劣化すれば、新しいタイヤの購入につながります。

 また、来店時に車両の安全点検などを実施する店舗であれば、タイヤ以外のメンテナンスを提案する機会も生まれます。つまり、一度タイヤを預かることで、

 保管料
 ↓
 次回の履き替え工
 ↓
 定期的な点検
 ↓
 交換時期における新しいタイヤの販売
 ↓
 その後のタイヤの保管

 という循環を作ることができます。

 一回限りのタイヤ販売を、季節ごとにお客様との接点が続く継続型のビジネスへ変えているのです。

他のお店でも使える
「保管して次回、来店を作る」設計

 ・クリーニング店
 冬物のコートや布団をクリーニング後に次のシーズンまで保管する。自宅の収納スペースを空けてもらいながら、次回もクリーニングと保管をまとめて依頼してもらいやすくする。

 ・呉服店
 着物を適切な環境で預かり、定期的に状態を確認する。保管中のカビや汚れ、ほつれなどを点検することで、必要な時期にクリーニングや仕立て直しを提案できる。

 ・スキー・スノーボード店
 シーズン終了後に板やブーツを預かり、次のシーズン前にメンテナンスして渡す。保管の手間をなくすだけでなく、ワックスがけ、修理、用品の買い替えなどを提案する接点を作れる。

まとめ

 タイヤ店が、使わない季節のタイヤを預かるのは、お客様から保管料を受け取るためだけではありません。

 ・大きく重いタイヤの保管と運搬の負担をなくし、お客様に明確な利便性を提供し
 ・タイヤを預かった時点で、次のシーズンの交換先と来店時期を自然に決め
 ・履き替えのたびにタイヤの状態を点検することで、お客様が必要性を理解しやすいタイミングで買い替えを提案し
 ・「自分のタイヤを継続して管理してもらっている」という安心感によって、価格だけではない再来店理由を作り
 ・保管、履き替え、点検、買い替え、再び保管という循環によって、一回限りの販売を継続的な関係へ変える

 という、お客様の面倒を引き受けることで、次の来店と将来の売上を同時に作る販促の仕掛けなのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。