仲間外れの「心の痛み」は
身体の痛みに近かった
このような条件下で、実験参加者の脳の反応をfMRIで観察してみると、Aの自分も含めた3人が交互にボールのやり取りを行っているときに比べ、Bの「仲間外れ」状況では、「前帯状皮質(ACC)」と呼ばれる部位が活性化することがわかりました。
実はこの部位は、身体の痛みを感じる部位とほぼ同じところなのです。
身体的な痛みの刺激そのもの、つまり「痛い」という感覚自体は「体性感覚野」というところで処理されるのですが、「その痛みがどれだけ不快か、苦痛か」という感情を伴う反応については、この前帯状皮質で処理されます。
人は普通、仲間外れという社会的排除を経験すると、心の痛み、いわゆる「情動的苦痛」を感じます。そして、その痛みは身体的な痛みと同じところで処理されることがこの実験からも確認できました。
このことから、孤独による心の痛みも、身体的な痛みと近い、あるいは同じものということができるでしょう。
「孤独は伝染する」などと言うと、思わず驚かれたり、疑ったりする方もいらっしゃることでしょう。しかし、ジョン・T・カシオポは複数の研究者とともに、2009年に「孤独は風邪のように人々の集団の中で広がる可能性がある」との研究結果を発表しています。
この研究では、60年以上にわたり5000人以上にのぼる人たちの健康状態を追跡調査してきた大規模研究のデータを用いて、孤独な人々が、その孤独を他者と共有する傾向があることが発見されました。
共有の方法はさまざまですが、とりわけ現在のSNSの発達した社会では、多岐にわたります。現代では「孤独」といっても、人とのつながりがまったくないわけではありません。現にSNSのネットワーク上ではとりあえず仲間同士のつながりをもっているわけです。
その中で、ときが経つにつれ、ともに共有する孤独という経験によりできあがった「孤独な人々の集団」は、次第に社会的ネットワークの周辺部、つまり、「孤立する側」へと追いやられていく傾向があるのです。
完全に孤立し、ネットワークから外れてそれまでの仲間との関係が断絶される前に、彼らの孤独な感情はネットワークに残された元仲間たちへと伝染するのです。すると彼らもまた孤独になるリスクを抱えることになります。
次々とこうした伝染の連鎖が起これば社会的な絆は端からほつれていくことになります。







