わが子がもっと伸びる! 中高一貫校&塾&小学校【2027年入試版】#1

小学校低学年から中学受験塾に通う子どもが近年増加しており、昨秋にはついに業界初の未就学児(年長児)を対象とした中学受験コースを新設する大手塾まで登場した。では、低学年からの塾通いで合格率が上がるのか。特集『わが子がもっと伸びる!中高一貫校&塾&小学校【2027年入試版】』の#1では、中学受験塾における東の横綱であるSAPIX(サピックス)の広野雅明教育事業本部本部長と、西の横綱である浜学園の松本茂学園長が、この「低学年からの塾通い」をテーマに対談。難関校合格率との相関性から入塾時期の見極め方、入塾テストの突破法、家庭学習のコツ、そして春休みの過ごし方まで熱く語り尽くした。今回は特別対談の「前編」をお届けする。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

「未就学児」向け中受コース新設の塾も登場
東西のトップ塾は通塾の低年齢化をどう思う?

――近年、中学受験のために小学校低学年から通塾する児童が増加し、昨秋には栄光ゼミナールが業界初の未就学児(年長児)を対象とした中学受験コースを新設しました。この状況をどのようにお考えですか。

広野雅明・SAPIX(サピックス)教育事業本部本部長 まず、塾通いそのものと、受験勉強をいつから本格的に始めるかは、別のこととして考えるべきだろうと考えています。

 浜学園さんも同じスタンスだと思いますが、サピックスの場合、幼児期、小学1~3年の低学年、4年生以上、この三つの段階でそれぞれ明確に考え方を分けてカリキュラムを組んでいます。子どもの脳の発達段階もありますし、早ければ早いほどいいというものでもないと考えるためです。年齢や学年相応に、子どもにとって最適な学習を提案していくイメージですね。

 サピックスでも未就学児を対象に、「幼児教室サピックスキッズ」を展開していますが、こちらは中学受験に直結する学習内容ではありません。受験に限らず生きていく上で必要になるコミュニケーションスキルや、さまざまなパズル的な面白い問題を試行錯誤しながら解くという非認知能力を伸ばすことが目的ですが、それと同時に通塾を始めるための準備として活用していただきたいです。

広野雅明・SAPIX(サピックス)教育事業本部本部長ひろの・まさあき/SAPIX草創期から算数を指導、算数科教科責任者や教務部長などを歴任。現在は入試情報や広報、新規事業などを担う。

 そして、卒園後の小学1年生からはサピックス小学部本体での授業が始まりますが、1~2年生は算数・国語の2教科のみで、基本的に「先取り学習」は一切しておらず、学習範囲は該当学年の内容になります。

 学習内容は、昨今の中学受験の入試問題は試行錯誤を要する問題が多く出題されているので、その土台になるトレーニングが中心です。例えば、算数であれば、先の内容に進むよりもじっくりと考えさせる。国語であれば、読解のテクニックよりも良質な物語文を先生と一緒に読み、物語の楽しさをこの時期に味わってもらう。登場人物の気持ちなどを先生と一緒に話しながら、それを文章にまとめ、学習の第一歩にしてもらいます。

 3年生からは理科・社会を加えた4教科になりますが、通塾日数も週1回と必要最小限です。この学年でも先取りはせずに、学びの楽しさを知ってもらうことに軸を置いています。テストは2教科のままなので算・国中心であることは変わりません。3年生の理科・社会での内容は、社会であれば各都道府県を巡る全国旅行を1年間かけてしていく。理科は卓上実験や実物の教材を持ち込み、理科的な面白いことを体感で学んでもらっています。

 そして、4年生からが従前と変わらず受験学年と位置付け、4~6年生の3年間を通して中学受験に必要な学力を整えていくステージになります。

――浜学園の方はいかがでしょうか。

松本茂・浜学園学園長 浜学園でもカリキュラムの進め方は、広野先生のお話とほぼ同じ発想を持っています。

 中学受験の勉強をできる限り早く始めた方が良いという意見もあるでしょう。ですが、われわれ塾サイドが「いついつから始めましょう」というのは、あくまで一般論。同じ年齢、学年でも親が子どもの横にいるべき時期にある子どももいるし、むしろ親が手助けせずに一人でやらせた方が良い子どももいます。

 浜学園は1年生から本格的な授業が始まるというスタイルですが、実は同じグループの幼児教育「はまキッズ」も(未就学児に加えて)2年生までコースがあるんですね。つまり、1~2年生の間は、幼児教室と浜学園本体が並存しているわけです。

松本茂・浜学園学園長まつもと・しげる/浜学園学園長。同塾講師歴26年。社会科主席主管を務めた後、2022年4月より現職。

 保護者からすればどちらを選ぶべきか迷うのではと思われるかもしれません。低学年が学んでいる内容は、幼児教育の算数も、浜学園本体のそれもそれほど違いはなく、基礎学力と学習習慣をしっかりつくるという考え方のベースは同じです。

 違いは、子どもが幼児教室で親も一緒に参加してやるべき段階なのか、浜学園本体に一人で通っても何とかできる段階なのか、という成長度合いにあります。例えば算数などに興味を持つ子どもが成長するにつれ、親が口出しするのを嫌がり、独力でやろうとすることがあります。その状態になれば、子ども一人で授業を受けても、内容を咀嚼(そしゃく)できるようになります。逆に、幼児教室でお父さんやお母さんの顔を見て、親がどんな反応をしているか確かめてから課題に取り組む子どもならば、いきなり一人で塾通いさせてもポカンとしているだけになる可能性が高いでしょう。

 受験勉強が本格的に始まる4年生以降のカリキュラムは、入試日というタイムリミットがあるので、小学校のように「○年生はみんなこれができるようになろうね」と積み上げていくのではなく、ゴールから逆算したものを作っています。つまり、4年生ぐらいから学校の学習進度と擦れ違いが起きるんですね。よく、われわれが「少なくとも4年生から通塾してください」と言う理由はこのためで、もちろん5年生から塾通いを始めても間に合う子どももいますが、追い付くためにしんどい思いをしなければならない。

――低学年の間は本格的な受験勉強はしないとはいえ、サピックスも浜学園も低学年のうちから、クラス分けテストなどで偏差値を出し、その結果に多くの保護者が一喜一憂しています。例えば、偏差値30~40だと焦る気持ちになったり、「もっと早くからやらせていれば」と後悔したりする家庭は多いのではないでしょうか。

広野 サピックスでは例えば開成中学校に毎年200人前後が合格していますが、その子どもたちの5年生、4年生、3年生、2年生、1年生それぞれのときの偏差値をさかのぼって調べ、偏差値帯ごとの合格率を分析しています。その結果を見ると……。

次ページでは、サピックスにおける開成合格者の学年ごとの偏差値と合格率との相関性に加え、子どもの入塾時期を見極めるポイント、そして入塾テスト突破のノウハウなど、東西のトップ塾が伝授する。