頭をかかえる女子学生写真はイメージです Photo:PIXTA

新しく入った高校にいつまでも所属意識を持てない、クラスメイトや先生からのサポートが感じられない、自尊心が著しく低下する……。高校に入学して2カ月ほど経っても子どもたちがこのような心境でいるなら、それは「つまずきのサイン」だという。本稿は、飯村周平『高校進学でつまずいたら 「高1クライシス」を乗り越える』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

本文では、3名の新入生の架空ケースを紹介しています。

プロフィール
Aさん……入学早々、風邪で4日ほど学校を休んでしまった。登校した頃にはすでグループができあがっており、疎外感を感じている。性格は素朴でシャイ。家から学校まで片道1時間かかる。

B君……中学からサッカーをしており、高校の部活でもサッカーを選択したものの、ハードなサッカー部の練習に疲れて授業中に居眠りするうちに授業についていけなくなった。部活と勉強、どちらも本人が納得いく結果を出せておらず自信をなくしている。

Cさん……入学早々、すぐに同じクラスの仲の良い友人ができた。また学校も家から近いため通いやすく、通学のストレスも少ない。姉が2人いるため、高校生活のイメージもできていた。温厚な性格。

学校への所属意識の低下は
「つまずき」のサイン

 高校に入学すると「自分はこの学校の一員なのだ」という所属意識が小さくなる傾向があります。もちろん、中高一貫校でもなければ、同級生も教員も、そのほとんどが新メンバーになるわけですから、進学直後に所属意識が小さくなるのは自然な変化ではあります。

 ただ、この所属意識の低さは、進学後のさまざまな「つまずき」と関連することが知られているので、それだけでも着目に値すると言えるでしょう。例えば、入学早々に風邪でスタートが出遅れ、つまずいてしまった新入生のAさんも、しばらくの間は学校やクラスへの所属意識が著しく低いようでした。

 次の文は、自分自身が「学校やクラスのなかで浮いた異質な存在だ」と感じている程度を測る心理尺度の一部です。新入生の読者のみなさんは、今の時点でこれらがどのくらい自分に当てはまると思いますか?

「まったくあてはまらない(1点)」「あまりあてはまらない(2点)」「どちらともいえない(3点)」「ややあてはまる(4点)」「非常によくあてはまる(5点)」で回答してみてください。

・私のような人間は、この学校では受け入れられにくいだろう
・時々私はここの一員ではないかのように感じる
・私はここのだいたいの学生たちとはまるで違うと感じる

 得点が高いほど、あなたは自分が学校やクラスのなかで浮いた存在だと感じているようです。進学直後であれば、このような気持ちを多少は感じるとは思います。しかし、それがあまりに強すぎたり、長く続いたりするのであれば、それは「つまずき」のサインといってもよいかもしれません。

子どもの「孤独度」と関連する
「サポート知覚」とは?

 学校生活で何か困ったことがあれば、友達や先生にアドバイスをもらったり、話を聞いてもらったり、サポートを受けることができます。とはいえ、お察しの通り、進学後に学校やクラスに集まるのは「見知らぬ者」同士ですから、必ずしも中学時代と同じようにいくわけではありません。

 実際、心理学者たちが実施したいくつかの調査では、入学後に生徒たちが同級生や先生たちからサポートを感じにくくなっている様子を示すデータを報告されています。もちろん、学校への所属意識と同じように、新しい学校でサポートが得られにくくなると感じるのは、決して「おかしい」ことではなく、自然なことです。