原子の中で、電子はどこにあるのか。ニールス・ボーアは「惑星が太陽のまわりを回るように、一定の軌道の上を動いている」というモデルを唱えた。しかしその後、このモデルは正しくないと判明する。電子がどのように存在するかは、どのように判明されたのか。ハイゼンベルクやシュレディンガーなど、多くの科学者・物理学者が挑んだこの問題を『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からの化学』から紹介する。

女性の科学者Photo: Adobe Stock

電子軌道

科学者として原子の構造を初めて思いついたのはニールス・ボーアである。

ボーアのイラスト『14歳からの化学』よりニールス・ボーア

ボーアは、原子の中のどこに電子があるのかを知りたいと思った。
そこで、ちょうど惑星が太陽のまわりを回っているのと同じように、電子は原子核を中心とする軌道(きどう)の上を回っているのだと唱えた。

軌道 ある物体が別の物体のまわりを運動する曲線の経路

それらの電子軌道の持つエネルギーを、エネルギー準位(じゅんい)という。

地球のイラスト『14歳からの化学』

ボーアは電子軌道に関して以下のような規則を導き出した。

・それぞれの電子軌道は、特定の大きさとエネルギーを持っている。エネルギーは軌道の大きさと関連していて、小さい軌道ほどエネルギーが低い。

・電子軌道はそれぞれ原子核からの距離が決まっている。電子軌道には、原子核から外側に向かって番号が割り振られる。

電子軌道 原子核のまわりで、電子が見つかる可能性のある位置

ボーアの理論によると、電子がエネルギーを獲得したり失ったりするためには、ある電子軌道から別の電子軌道に飛び移るしかない。

ボーアのモデル『14歳からの化学』

もっとも外側の電子軌道に入っている電子を価電子という。

・電子が外側の軌道から内側の軌道に飛び移ると、光子の形でエネルギーが放出される。

のちに、ボーアのモデルは正しくないことが明らかとなった。
ボーアのモデルでは、電子軌道は原子核から決まった距離にあるとされていたが、それは間違いであることが証明された。
しかし、原子の中に電子がどのように収まっているかを、構造として初めて示したのは、やはりボーアである。

粒子か波動か

電子がどのように振る舞うかをめぐっては、いまだに混乱があった。
波動のように振る舞うのか? それとも、量子として粒子のように振る舞うのか?
ルイ・ド・ブロイは、その両方だと言った。
波動が粒子のように振る舞うのと同じように、粒子が波動のように振る舞うことがあると唱えたのだ。

科学者のベルナー・ハイゼンベルクは、波動のように振る舞う電子の位置を正確に知ることはできないと論じた。
波動は空間中で広がっていて、どこまでも続いているからだ。

ハイゼンベルクの導き出した不確定性原理によると、粒子の運動量と位置の両方を同時に正確に知ることは不可能である。

したがって、ボーアの考え出した、整然とした電子軌道のモデルは間違っている。
電子軌道は1本の線で描けるような経路ではなく、電子が存在するかもしれない空間領域に近いものである。

オーストリアの物理学者エルビン・シュレディンガーは、以上の説をまとめ上げて、シュレディンガー方程式と呼ばれる数式を導き出した。
この方程式を土台として、原子および、電子・陽子・中性子などの亜原子粒子の相互作用を説明する、量子力学が構築された。

シュレディンガー『14歳からの化学』エルビン・シュレディンガー

シュレディンガー方程式については、以下のことを知っておくのが重要である。

・一つの方程式の中に、波動としての振る舞いと粒子としての振る舞いの両方が組み込まれている。

・ある位置に電子が見つかる確率は、波動関数の2乗に比例する。

・電子の位置を正確に知ることはできないが、ある時刻に電子がある位置に見つかる確率は求められる。

・エネルギー状態と波動関数は、一連の量子数によって記述される。