世の中をあっと言わせる偉業を成し遂げた人は、どんなことを考えていたのか。サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本映画史上初のグランプリを受賞し、『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』を上梓した長久允氏の思考を辿ります。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本40代Photo: Adobe Stock

 仕事は滞りなく回せるようになった40代。

 任されることも増えたし、若い頃のような失敗はしない。

 けれどその一方で、「自分は本当は、何をしたかったのだろう」「毎日つまらない」と感じることがあるかもしれません。

誰かが作った商品を「なんとなくいい」と思わせることに時間を使っていないか

 20代、30代は、目の前のことに必死です。

 しかし、そうやって走っているうちに、自分の中にあったはずの「やってみたかったこと」や「本当に作りたかったもの」に、いつの間にかふたをしている。

 40代で後悔しないために、どんな生き方をしたらいいでしょうか。

 映画監督/脚本家として世界で活躍する長久允(ながひさ・まこと)さんは、夢を一度あきらめ、会社員として働いていた時期について、こう振り返っています。

 「映画を作りたい」という気持ちには、もうすっかりフタをして鍵をかけ戸棚の奥にしまって、サラリーマンをしていました。


――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p21より

 長久さんも、広告会社で営業職として働き、その後CMプランナーになります。

 仕事自体は好きで、ある程度の結果も出る。やりがいもある。

 大企業の現場から離れ、店頭ビデオを作る仕事に移ったときには、お客さんの顔が見え、どういう気持ちになってほしいかも明快で、手応えもあったといいます。

 けれどある日、体調を崩したとき、長久さんは自分に問いかけます。

 どうして私は、こんなにも、死にそうになりながら、命を捧げながら、誰かが作った商品を「なんとなくいい」と思わせることに時間を使っているのだろうか。自分が作りたい物語があったはずなのに。自分には伝えたいメッセージがあったはずなのに。


――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p28より

人生のクライアントは「自分」

 40代で人生後悔する人が、いつの間にか手放しているもの。

 それは、才能やチャンスだけではないのかもしれません。

 自分の人生を、自分のものとして扱う感覚です。

 もちろん、会社やクライアントのために働くのも大切なことです。けれど、そればかりが続くと、自分が置き去りになってしまう。

 自分の人生のクライアントは、「自分」じゃんか。


――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p29より

 長久さんのこの気づきは、仕事を頑張ってきた人にこそ響くかもしれません。

 誰かの評価を気にして、自分のやりたいことを小さくしているうちに、自分の人生を他人に明け渡してしまっていないか。

 長久さんが映画を作り始めたのは、32歳からだったといいます。

 夢をあきらめ、十数年違う道を歩いたあとで、もう一度、自分が本当にいいと思うものを作ろうとした。その遠回りがあったからこそ、後に世界で評価される作品へとつながっていきました。

 だから、遅すぎると決めつけず、一度立ち止まって、自分の気持ちに向き合ってみる。

 そうすると、思いがけない「退屈しない人生」が待っているかもしれません。