しかし今回は、こうした見方が通用しない可能性がある。まず、そもそも中道勢力の候補が決選投票に進めるかどうかも不透明な情勢である。直近の支持率では、極左政党「不服従のフランス」を率いるジャンリュック・メランション氏が2位につけている状況だ。中道勢力が確実に決選投票に進むには、乱立する立候補者の間で調整を行い、少なくとも主要候補を一本化する必要がある。しかし、多党化が進んだフランスでは、中道勢力は小規模政党の集合体であるため、政党間で候補者を調整することは容易ではない。
さらに、仮に中道勢力が候補者調整に成功し、決選投票に進んだとしても、ルペン氏を破ることができるとは限らない。前述の世論調査では、決選投票での候補者の組み合わせごとの投票先も尋ねているが、いずれのパターンでもルペン氏が優位に立っている(図表2)。2027年4月の第1回投票、5月の決選投票までに中道勢力が国民からの支持を回復できない場合、フランスで「極右大統領」が誕生することになるだろう。
「ルペン大統領」でEU統合に暗雲
ウクライナ支援にも大きな影響
ルペン氏が大統領に就任した場合、フランスのEU内での立ち位置は大きく変化するだろう。RNはかつてのように「ユーロ脱退」や「EU離脱」といった急進的な主張を前面に掲げてはいないものの、EUよりもフランスの主権を優先する姿勢を崩していない。ルペン大統領の下では、フランスはEU統合をけん引する国から、EUの意思決定にブレーキをかける国へと変質する可能性が高い。
影響が最も大きく表れるのは、ウクライナ支援と対ロシア政策である。マクロン政権下のフランスは、支援の規模や姿勢を巡り紆余曲折はあったものの、基本的にはEUとNATOの枠組みの中でウクライナ支援を継続してきた。これに対しRNは、ロシアは脅威であるとの認識を持ちつつも、フランスの国益に資さないとの考えから、対ロシア制裁やウクライナ支援には消極的である。ルペン政権が誕生すれば、欧州の安全保障・防衛協力の足並みは乱れる公算が大きい。
そのほか、移民や脱炭素化を中心に、EUレベルの幅広い政策で意思決定が困難になるだろう。RNは一貫して移民規制の強化を訴えており、国境管理の強化や送還の加速を掲げている。EUの移民政策にも批判的で、シェンゲン協定加盟国との間でも厳格な管理を要求している。脱炭素化に関しては、環境保護の必要性は否定しない一方、フランスの産業競争力との両立を重視し、EUレベルでの規制強化には反対している。
さらに、EU予算への拠出を半減するとも主張しており、EUが将来的に目指す「財政統合」への道のりは一段と険しくなる。








