欧州での金利上昇が日本にも波及
企業と家計を襲う新たなリスク

 フランスを中心とした欧州での金利上昇が日本の金融市場に波及すれば、日本経済の下振れリスクとなりかねない。日本経済は長らく超低金利環境が続いてきたが、デフレ脱却と金利上昇が進む中で、企業も家計も「金利ある世界」への適応過程にある。こうした局面で外的ショックが加われば、国内長期金利の上昇ペースが想定以上に速まるリスクがある。

 企業部門では、金利上昇は利払い費の増加という形で収益を圧迫するほか、借り入れコストの上昇が設備投資を下押しする。特に、これまで低利資金を前提に成り立っていた投資案件は採算が悪化しやすく、投資判断の見直しを迫られるだろう。経済成長率の上昇やデフレからの脱却に伴う金利上昇であれば、資本や労働力の再分配による生産性の向上につながることが期待されるが、外的ショックによる金利の急上昇では景気に対する負の影響が大きくなりやすい。

 家計部門でも影響は大きい。日本の家計部門全体では債務残高を金融資産残高が大きく上回るため、マクロで見れば金利上昇による利払い費の増加よりも利息収入の増加の方が大きくなりやすい。しかしミクロで見れば、その影響は各世帯の年齢構成や負債の有無によって大きく異なる。利息収入の増加による恩恵の多くは預金残高の多い高齢者世代にもたらされる一方、利払い費の増加分のほとんどは住宅ローンを抱える現役世代が負担することになるためだ。

 フランスで極右大統領が誕生する可能性は、もはや仮定の話ではない。仮にそのシナリオが現実となれば、EUは統合の推進役を失い、欧州の政策協調は大きく揺らぐ。また、同国の財政不安が高まれば、フランス国債の金利上昇を起点に、日本の金融市場にも緊張が広がるおそれがある。足元日本でも財政懸念が長期金利の上昇につながっているという見方もあり、フランスの動向が日本の長期金利上昇を加速させる可能性には留意が必要であろう。

(伊藤忠総研副主任研究員 高野蒼太)