「少しだけ」のつもりでスマホを開いたら、気づけば30分。寝る前に動画を見始めて、いつの間にか1時間。そんな経験はないでしょうか。500万ダウンロードを突破したアプリ「集中」の開発者で、『脱スマホ術』の著者・戸田大介さんは、「1日5時間スマホを見る生活を続けると、生涯で約14年をスマホに費やす計算になる」と指摘します。スマホの見過ぎをやめるには、どうすればいいのでしょうか。戸田さんに聞きました。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

人はスマホで「人生14年」を失う。でも本当に失うのは「時間」ではないPhoto: Adobe Stock

スマホを1日5時間見ると「人生の14年」が消える

――『脱スマホ術』では、スマホを1日5時間見る生活を続けると、生涯では約14年をスマホに使うことになると書かれています。「14年」と聞くと、かなり衝撃的です。

戸田大介(以下、戸田):そうですね。1日単位で考えると、スマホを何時間か見ていても、それほど大きなことには感じないと思います。

 でも、それが毎日積み重なっていくと、私たちがイメージする以上に膨大な時間になります。

15歳でスマホを持ち、84歳まで毎日スマホを見続けたと仮定すると、このような年数になる。15歳でスマホを持ち、84歳まで毎日スマホを見続けたと仮定すると、一生のスマホ時間はこのように膨大になる

 もちろん、スマホを見ている時間がすべて無駄だという話ではありませんし、SNSや動画アプリを楽しむこと自体が悪いとは思いません。問題なのは、「本当はこんなに見るつもりではなかったのに、気づいたら何時間も見ていた」という時間です。

 YouTubeを見終わったあとに「面白かった」と満足できるなら、それは有意義な時間だったと言えるでしょう。一方で、「また1時間も見てしまった」「本当は勉強しようと思っていたのに」と後悔するのであれば、自分が望んでいた時間の使い方とは違っていたということです。

本当に失っているのは「時間」だけではない

戸田:そして、そうした「本当は別のことに使いたかった時間」をスマホに使い続けることで失われるのは、時間だけではありません。

 私たちが何かをしようと思ったら、必ず時間が必要です。語学を身につけるにも、本を読むにも、仕事で何かを成し遂げるにも、家族や友人と過ごすにも、時間が必要です。

 つまり、人がなんとなく時間を失っているとき、私たちは可能性を失っていると言えます。ただ、これは「スマホを見てはいけない」という極端な話ではなく、私たちはスマホ時間のほんのすこしを活用するだけで、自分が望む方向に大きく近づける、と捉えるべきだと思います(スマホ時間の6%を勉強時間に変えただけで、日本でいちばん難しいと言われる「司法試験」に受かるほどの時間が捻出できます)。

それでも、なぜスマホをやめられないのか?

――スマホ時間を減らそうと思っても、実際にはなかなか減らすのが難しいのはなぜでしょうか?

戸田:まず知っておいてほしいのは、私たち人間の行動は、「今日はこれをやろう」という自分の意志だけで決まらず、周りの環境から大きな影響を受けるということです。

 たとえば、勉強しようと思って机に向かっていても、目の前にスマホがあって、YouTubeをすぐ開ける状態だったらどうでしょう。

 理性では「勉強しなければ」と分かっています。でも、本能は「今すぐ楽しい動画を見たい」と求める。このとき、多くの場合は目の前の誘惑に負けてしまいます。

 これは、本人の意志が特別に弱いからではありません。目の前に強力な誘惑があれば、本能を抑えて意志の力だけでそれに抗うことは、誰だって難しいのです。

 SNSや動画アプリには、私たちがつい見続けてしまうような仕組みがたくさんあります。こういったアプリの多くが、広告収益によって成り立っていて、ユーザーにアプリを長く使ってもらうほど、企業の利益につながります。

 そのため、次々と新しい投稿が出てくるタイムラインや、短い動画が途切れなく流れてくる仕組み、スマホを開きたくなる通知など、利用者の注意を引きつけるさまざまな工夫がされています。

 人間はもともと目の前の誘惑に弱い。そのうえ、SNSや動画アプリには、ユーザーの注意を引きつけるための仕組みがいくつもあります。だから、「今日は絶対にスマホを見ない」と意志の力だけで対抗しようとしても、うまくいかないのが当たり前なのです。

「スマホを見ない」と決意するだけでは変わらない

――では、人生の時間をスマホに奪われないためには、どうすればいいのでしょうか。

戸田:大切なのは、「スマホを見ないように頑張ろう」と考えるのではなく、ついアプリを開いてしまう環境を変えることです。

 効果が高い一つの方法が、依存しすぎているアプリをスマホから削除することです。

 アプリが入っていれば、ワンタップですぐに開けます。ホーム画面にアイコンがあるだけでも、そのアプリの存在を思い出してしまいます。通知が来れば、それもアプリを開くきっかけになります。

 ですから、たとえばSNSを何時間も見てしまうなら、まずアプリを削除してみる。ただし、「もう二度とSNSを見ない」と禁止する必要はありません。見たくなったら、SafariやGoogle Chromeなどのブラウザから見てもいいんです。

――完全に禁止しないことがポイントなんですね。

戸田:はい。ブラウザから見るとなると、アプリをワンタップするより少し面倒ですよね。そのわずかな手間があるだけでも、反射的に開く回数を減らすことができます。

 もう一つ簡単なのが、スマホを物理的に遠くへ置くことです。仕事や勉強をするとき、机の上にスマホを置かない。できれば別の部屋など、立ち上がらないと取れないところまで離してしまうのです。

「そんなことで変わるの?」と思うかもしれませんが、このようなちょっとした手間を増やすだけでも、スマホを反射的に開く回数を減らすことができます。

 スマホを見る時間をゼロにする必要はありません。毎日少しずつ減らすだけでも、1週間、1ヵ月、1年と積み重なれば、大きな時間になります。

 これまでスマホに使っていた時間は、見方を変えれば、これから自分のために使える時間でもあります。勉強でも、読書でも、運動でも、本当はやりたかったことに少しずつ振り向けていけばいい。今、スマホの利用時間が長くて後悔している人ほど、これから自分のために使える時間もたくさん残っている。そう考えると、ポジティブな気持ちでスマホ対策に向き合えるかもしれません。