「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。
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スマホを開くたびに、あなたの脳は
「知らない他人の人生」に強制接続させられる
あなたは今日、何人の「他人」のことを考えましたか?
職場の同僚、学校のクラスメート、SNSでフォローしている誰か、フォローしてもいないのにおすすめに流れてきた誰か、その誰かのコメント欄で喧嘩している見知らぬ誰かと誰か……。
これを全部「他人」と定義したとすると、数えようとしたってもう無理ですよね。
実はスマホを開くたびに、あなたの脳は「知らない他人の人生」に強制接続させられています。
しかも、相手はあなたのことを1ミリも考えていない。この非対称さが、地味に、しかし確実にあなたのメモリを侵略していきます。
これをスマホに例えてみましょう。
Wi-FiをオンにしたままBluetoothもオンにしたまま、位置情報もオンにしたまま、画面輝度は最大で、バックグラウンドでは、大量のアプリが常時通信している状態。
この状態では、スマホのバッテリーはどんどん減るでしょう。でも多くの人が、脳みそを、まさにこの状態で毎日動かしているんです。
無意味な情報でも、
脳には相当な負荷がかかっている
「別にSNSを見ているだけだから」と思うかもしれませんが、脳にとっては「見ているだけ」ではありません。
流れてくる情報を処理して、感情を動かして、「自分はどう思うか」を瞬時に判断して……という作業を、スクロールのたびに高速でやり続けています。
しかも、相手は赤の他人です。今日の仕事でミスをした話でも、昨日食べたランチの話でも、謎の自撮りでも、あなたには何の関係もない。
でも、脳はそれを「処理しなくてはいけない情報」として受け取ってしまう。
どんなに無意味な情報であっても、相当な負荷が脳には常にかかっている。それが多くの人がやっている「ボンヤリしようとしてSNSを見ている」時の脳の状態です。
なんとなくのSNSチェックも疲労感の原因
外来でも、こういう人はよく来ます。
「特に何かあったわけじゃないのに、なんか毎日ぐったりしていて」と言う人です。
話を聞いていくと、朝起きてすぐSNSを開き、通勤中もチェックして、昼休みも確認し、帰り道も見て、寝る前も開いている。1日に何度も何度も、誰に言われた訳でもないのに。
「誰かの投稿を見て嬉しくなったり、嫌な気持ちになりましたか?」と聞くと、「そういうわけでもないんですよね……なんか、見てしまうというか」という答えが返ってきます。
本人は、「なんとなくしている行為」。これが完全に脳のバッテリーの無駄遣い=「正体不明の疲労感」の原因なのです。しかも前述の通り、本人に自覚がない分、すごく面倒なことになります。
嫌なことがあって消耗したなら、まだ原因がわかりやすい=対処方法が自分で考えられるかもしれません。
でも、「なんとなく見てしまった赤の他人の日常」で消耗した脳のバッテリーは、消耗した理由すら本人が把握できていない。気づいたら、常にバッテリーの残量が10%を切っている状態、疲労困憊(ひろうこんぱい)状態なのです。
それだけ他人の情報を処理し続けた脳が、帰宅後に「さあ自分の時間だ」とサクサク動くかというと、もう答えはわかりますよね。
風呂に入るのが面倒、ご飯を作る気になれない、趣味のことをやろうと思っていたのに、なぜか何もやる気が起きない。
これは、能力の問題でも、意志の問題でもありません。
単純に脳のバッテリーが切れかけて、処理できない、動く気力が無い状態になっているだけです。
しかし、現代社会に生きる我々は、常に多くの情報に囲まれています。
お店に入ればインスタフォローで割引とか、友達がどうしたこうした、仕事がなんだかんだ。だから、ちゃんと自分の時間に自分のバッテリーを使うためにも、我々は意識的に頭を「機内モード」にする時間が必要なのです。
飛行機に乗るから仕方なくやる、ではなく、「自分のバッテリーを自分のために使うための、能動的な選択」として機内モードにする。
SNSを見ない時間を作る、通知をオフにする、誰かのことを考えるのをやめる。
それは冷たいことでも、社会から逃げることでもありません。
自分というスマホを、ちゃんと自分のしたいことのために、サクサク動かし続けるための、当たり前のメンテナンスです。
本当に必要な情報や連絡は、向こうからやってくる
「でも、SNSを見ないと情報に乗り遅れそうで不安で……」という人もいます。
正直に言います。あなたが流し見している情報の9割は、明日のあなたの人生に1ミリも影響しません。本当に必要な情報や連絡は、向こうからやってきます。
試しに今夜だけ、寝る前のSNSをやめてみてください。スマホを充電器に繋いだら、そのまま手を離す。それだけでいいです。
眠くなるまでずっとスマホを触っていたら、脳のバッテリーの充電速度も遅くなるし、バッテリーの寿命も短くなってもおかしくない気がしませんか?
翌朝、脳の起動がいつもより軽いと感じたなら、あなたの脳のバッテリーがどこで浪費されていたのか? が少しわかるかもしれません。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。




