人生の重要な局面に不在?

さらに、彼の私生活の破綻は、お金の問題だけにとどまりませんでした。

そんななか昭和28(1953)年、妻・三千代さんは長男を出産しますが、安吾は出産に立ち会えませんでした。それというのも、留置場の檻のなかにいたからです。
――『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』より

妻の出産という人生の一大事に、警察の留置場にいたというエピソードは衝撃的です。なぜ、これほどの人気作家が檻の中に入れられてしまったのでしょうか? その背景には、深刻な心身の不調がありました。

当時、文藝春秋の企画の一環で、安吾と檀一雄という無頼派2人が、長野県に取材に行くことになりました。このときも安吾はヒロポンや睡眠薬による依存症の症状で、ときどき錯乱状態になることがありました。
――『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』より

プレッシャーの多い環境下で、パフォーマンスを維持するため、あるいは過度なストレスから逃れるために、酒や薬に依存してしまうケースは現代社会でも起こり得ます。しかし、心身の健康を損なえば、最終的には仕事だけでなく、家族との絆や社会的信用など、人生において最も大切なものまで失いかねません。

坂口安吾の残した数々の名作は今も色褪せませんが、その破滅的なライフスタイルは、決して真似できるものではありません。

私たちが長く第一線で活躍し続けるためには、卓越した「スキル」を磨くのと同時に、お金や健康をコントロールする「自己管理能力」が不可欠なのです。