年齢を重ねるにつれて、体力が落ちていくのは誰にでも起こることだ。しかし同じように年を重ねても、元気に動き続ける人がいる一方で、ある時期から一気に体が衰えてしまう人もいる。両者を分けるものは何なのか。医師で老年医学の専門家であるガブリエル・ライオンによる『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』から、老後の体の衰えを大きく左右する要因を紹介する。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)

老後に「急に体が衰える人」の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

老化は「加速」する

 ある年齢を境に、坂道を転がり落ちるように心身が衰えていく人がいる。その衰え方を左右する大きな要因の一つが、若いうちからの運動習慣だ。とりわけ重要なのが、筋力トレーニングである。

 医師で老年医学の専門家であるガブリエル・ライオン博士は著書『筋肉が全て』において、人生後半の肉体崩壊は、中年期における「筋肉の軽視」から始まると警告する。

 私たちは、中年期の過ごし方によって老化が加速することを知っている。
 骨格筋が失われるということは、細胞内でエネルギーを生成するミトコンドリアが失われるということだ。
 エネルギーが生成されなければ疲れるのは当然だ。
 疲労が進むとエネルギーを使わなくなり、 消費カロリーが減る。
 消費されなかったカロリーは脂肪として蓄積され、過体重につながる。
 こうして病気のサイクルが回り始めるのである。
 骨格筋を鍛えてミトコンドリアを維持すれば、代謝のバランスが保たれ、老化に対する身体の鎧が完成する。――『筋肉が全て』より

 若い頃から筋肉を鍛える習慣を怠ったツケは、中年期以降に「慢性的な疲労感」と「肥満」という形で現れる。エネルギー代謝の主役であるミトコンドリアが、筋肉の減少とともに消失していくからだ。この病気のサイクルを放置した結果が、老後の急激な心身の崩壊を招く。

老年病の専門医の意見

 医療の発達によって「ただ生きながらえること」は容易になった。しかし、私たちの目標は単に病気がない状態の維持ではなく、日々の暮らしを心から愉しむことのはずだ。

 老年病の専門医として言わせていただくなら、何より大切なのは何歳になっても生活の質を維持するということだ。
 病気にならなければよいというものではない。
 たとえ病気でなくても、筋肉の健康は生活の質を大きく左右する。
 身体を自由に動かせれば、好きなことをして人生を楽しめる。
 良好な代謝を実現できれば、身体の機能と活力を保つことができる。――同書より

 好きな場所へ自らの足で行く自由、それを担保するのは病気の有無ではなく、良好な代謝がもたらす身体の活力にほかならない。

 若い頃に筋肉への投資を怠った代償は、老後の自由の喪失というあまりに重い形で返ってくる。若いうちから身体に負荷をかけ、代謝の鎧を築くこと。その選択の積み重ねが、私たちの晩年の景色を決定づけていく。