「決算書が読み解けない」という人は多いでしょう。しかしそこでオススメなのが「視覚的に会計を読む」方法です。書籍『サンキー図で「お金の流れ」が1秒でわかる 見るだけ決算書』に登場するPLサンキー図を見比べてみましょう。題材として、自動車メーカーであるマツダと日産を取り上げ、「利益を生み出す構造の差」を見ていきます。
営業利益はほぼ同じ、純利益は5,682億円違う
決算書は数字の羅列ばかりで、なかなか感覚的にわかるようになるまでには時間がかかるものです。そこで今回は、2社のPLサンキー図を見比べてみましょう。
マツダと日産自動車のPLサンキー図|上:マツダ、下:日産自動車
2026年3月期の営業利益は、マツダが516億円、日産が580億円。ほぼ同じ水準です。一方、親会社株主に帰属する当期純利益(以下、純利益)は、マツダが+351億円、日産が▲5,331億円。その差はなんと5,682億円です。
営業利益はほぼ同じなのに、なぜ最終利益ではここまで大きな差が生まれたのでしょうか?
日産の特別損失は5,768億円、マツダの約8倍

営業利益より下流を見ると、日産の特別損失の帯の太さが目立ちます。
特別損失はマツダが732億円、日産が5,768億円で約8倍です。なお、経常利益の段階でもマツダ1,318億円、日産11億円とすでに差がついています。そのうえで、巨額の特別損失が純利益の差をさらに大きく広げました。
特別損失5,768億円の内訳
では、日産の特別損失5,768億円は一体どんなものだったのでしょうか?
有価証券報告書を確認すると、最も大きいのは3,662億円の減損損失で、特別損失全体の6割超を占めています。減損損失とは、ざっくり言えば、工場や設備などについて「帳簿に載っているほどの価値を今後は回収できそうにない」と判断したときに、その価値を引き下げて損失として計上するものです。 日産では、事業用資産に加え、使われていない資産や処分予定の資産なども減損の対象となっています。
なお、これは資産価値を会計上引き下げる処理なので、その年に3,662億円の現金が出ていったという意味ではありません(実際、日産のCF計算書でも減損損失3,662億円は営業CFの計算上で足し戻されています)。
加えて、日産は経営再建計画のもとで生産拠点の再編や人員削減を進めており、特別損失には約850億円の特別退職加算金も含まれています。つまり、営業利益はほぼ同じでも、そこから純利益に至るまでの損益の差が、最終的な利益を大きく分けたのです。
「純利益」だけで判断するのはキケン
営業利益は、本業の売上から原価や販管費を差し引いた利益です。ビジネスモデルによって違いますが、市場環境やコスト構造が大きく変わらなければ、来期の収益力を考えるうえでも参考にしやすい利益です。
一方、純利益は営業外損益や特別損益、税金まで反映した最終的な利益です。特に、減損損失や事業再編に伴う損失などの特別損益は、その期特有の事情に左右されやすい項目です。営業利益と比べると純利益はブレやすい数字なのです。
そのため、2026年3月期の純利益だけを見て「マツダと日産では本業の稼ぐ力に5,682億円もの差がある」と考えると、実態を見誤ります。営業利益で見れば、その差はわずか64億円です。
決算書は「流れ」で読み解く
ただし、特別損失だから軽視してよいわけでもありません。 特別損失には、減損や事業再編に伴う費用など、通常の営業活動とは異なる重要な事象が表れます。毎期同じ規模で発生するとは限らない一方、企業が抱える課題や経営判断が反映されるため、その中身を確認することが重要です。
このようにPLを見るときは、純利益だけで判断せず、営業利益から純利益に至るまでに何が起きたのか、そしてそれぞれの利益がどの程度続きそうなのか、その「流れ」まで見ておきたいところです。
サンキー図で視覚的に決算書を読み解く
決算書を数字の羅列として見ているだけでは、純利益がどの項目の影響を強く受けて算出されたのかを追うのに手間がかかります。PLサンキー図を並べれば、営業利益から下流へ帯をたどるだけで、どこで利益が増減したのかを確認できます。
最後に、2社の分析を簡単にまとめます。
・純利益|マツダ+351億円、日産▲5,331億円、差は5,682億円
・最終損益の差を広げた主な要因は、日産の減損損失3,662億円
サンキー図を使って見ることで、「お金の流れ」とその要因まで確認することができます。サンキー図は、より深い決算分析を可能にするのです。






