涙を流す男性写真はイメージです Photo:PIXTA

中途入社では、これまでの実績や専門性がある人ほど「早く成果を出さなければ」と焦りがちです。約20年にわたり、企業の人材育成やキャリア支援に携わってきた前川孝雄氏(FeelWorks代表取締役・青山学院大学兼任講師)が、新しい職場で信頼を失わないためのポイントを解説します。(構成/ダイヤモンド・ライフ編集部)

経験豊富な人ほど
転職先でつまずきやすい理由

 40代、50代で転職するとき、企業側から期待されるのは即戦力。これまで積み重ねてきた経験や専門性です。

 大企業で長く働いた人が、中小企業やベンチャーに部長、役員クラスで迎えられることもあります。採用する経営者側は「この人なら、自社にない知見を持ち込んでくれるだろう」「早く成果を出してほしい」と期待しますし、本人もそれに応えたいと思うでしょう。

 しかし、私は中途入社者を支援する現場で、経験豊富な人ほど新しい職場でつまずいてしまうケースを何度も見てきました。

 理由の一つは、過去の成功体験が強いことです。

 20年、30年と同じ会社で働けば、その会社の仕事の進め方や意思決定の仕組み、人間関係、さらには言葉にされていない暗黙のルールまで体に染み込んでいきます。それ自体は悪いことではありません。むしろ、長く成果を出してきた証拠でもあります。

 問題は、過去の成功体験を無意識のうちに「世の中の標準」だと思ってしまうことです。

 会社が変われば、仕事の進め方も、意思決定の速さも、何を大事にするかも違います。それにもかかわらず、自分が慣れ親しんだ基準で新しい会社を見てしまうと「なぜこんな非効率なやり方をしているのか」「普通はこうするだろう」と、すぐに評価したくなります。

 特に部長や役員待遇で入社した人は注意が必要です。

 新しい部下たちは、上司として入ってきたあなたをよく見ています。しかし、最初から本音を言ってくれるとは限りません。むしろ「外からやってきた上司はどんな人なのだろう」と様子を見ています。

 しかも中途入社者には、それまで社内で築いてきた人脈がありません。誰が何に困っているのか、どんな経緯で現在の仕組みになったのかという情報も自然には入ってこない。自分から取りに行かなければわからないのです。

 それなのに、入社早々「自分は経験があるから」と答えを決めつけると、周囲との間に大きな溝ができます。

 では、中途入社で周囲から嫌われてしまう人は、具体的にどんな言葉を口にしているのでしょうか。