「最近の若い奴らは礼儀を知らん!」のか?
先回、プチネット断食のススメとともに、ヒューリスティック・バイアスについて簡単に紹介しました。今回は、少し戻って、ヒューリスティック・バイアスのことを掘り下げたいと思います。私たちは、そのバイアスの檻から逃れることはできるのでしょうか?
ヒトの判断力を歪(ゆが)める強いバイアスに「確証バイアス」と「あと知恵バイアス」があります。前者は「自説に都合のいい情報ばかり集める」傾向であり、後者は「なんでも事後には当たり前と思う」傾向のことを言います。
たとえばあるとき「最近の若い奴らは礼儀を知らん!」という考えを持ったとしましょう。たまたま目の前の若者が、老人に席を譲らなかったからです。でもまだ事例は1個。確率的には無意味な考えです。
でも、いったんそう思ったら、確証バイアス (Confirmation bias)が、全力で働き始めます。同様の事例「だけ」を収集し始めるのです。あいつもそうだ、こいつもそうだ。こんなことも、あんなこともあった……。礼儀を知らない若者は、確かに多いでしょう。でもきっと、他の世代でもたいして変わらないかもしれません。もしくは「最近の」ではなくて、「昔から」、若者はそうだったのかもしれません。
2400年前、ソクラテスも叫んでいます。「最近の若いギリシャ人は礼儀を知らん! 年長者を敬わないし、席を譲ろうとしないし、云々かんぬん」(第17講を参照してください)。
本当に、そうなのでしょうか?