部下から突然、「もう辞めます」と告げられた。そんなとき、上司はつい「どうして?」「何か不満があるの?」と理由を聞きたくなるものだ。しかし、退職の意思を伝えた部下に対して、最初から理由を問いただしたり、引き留めたりすることが逆効果になる場合もある。大切なのは、その言葉がどれほどの時間をかけて出てきたものなのかを知ることだ。では、部下に「辞めます」と言われたとき、上司は最初に何と返せばいいのだろうか。『3000件の職場の悩みを解決したプロが教える リーダーのふるまい大全』の著者・本田淳也氏が、その一言を解説する。
Photo: Adobe Stock
つい「なぜ?」と聞いてしまう
部下から突然「辞めます」と言われたとき、多くの上司はこう返します。
「何かあった?」「どうして?」「待遇に不満がある?」「考え直せない?」
気持ちはわかります。
原因を知りたい、引き留めたい、何とかしたい
――その思いから、つい理由を探しにいってしまう。
でも、この順番が間違っていることがあります。
最初に知るべきは、理由ではない
突然「辞めます」と言われたとき、上司が最初に返すべき一言。
それは、「いつから考えていた?」です。
「どうして辞めるの?」ではありません。
退職を考え始めた時期を聞くことで、その言葉が一時的な感情なのか、長い時間をかけた決断なのかが見えてきます。
「実は半年前から……」と返ってきたなら、今日の出来事で衝動的に言っているのではなく、意思はすでにかなり固まっている可能性が高い。
反対に「先週からです」なら、直近の出来事や感情が強く影響しているかもしれない。
つまりこの一言で、「辞めたい理由」より先に、「もう決断なのか、まだ相談なのか」を考える手がかりが得られるんです。
引き留め方を間違えると、逆効果になる
長く考えた末の決断なのに、上司がいきなり「何が不満なの?」「給料?」「異動なら考えるよ」と畳み掛ければ、本人からすると「そこじゃない」となります。
長い間悩み続けて、ようやく口にした言葉です。
その重さを測らないまま引き留めようとすると、「やっぱりこの人にはわかってもらえない」という気持ちを強めるだけになってしまいます。
最初の仕事は、引き留めることではない
「いつから考えていた?」と聞いた後、長期間悩んでいたとわかれば、まず「そうか、ずっと一人で抱えていたんだね」と受け止める。
短期間なら、「何かあったの?」と今の状況を丁寧に聞く。
その後で初めて、理由や今後の話に進んでいく。
上司の最初の仕事は引き留めることではありません。
その「辞めます」が、どれくらいの時間をかけて出てきた言葉なのかを知ることです。
そこから、すべての対話が始まります。








