ADHD(注意欠如多動症)の当事者で、ASD(自閉スペクトラム症)とADHDの2人の娘さんをもつなちゅ。さん。新刊『ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと』では、子どもから大人まで一生使える具体的な対応策を伝えている。今回のテーマは、相談を受けたときの対応。よかれと思ってやったことが、なぜ人を遠ざけるのか。著者に話を聞いた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局、イラスト/武者小路晶子)

「ノーモーションの解決策提案」をやっていませんか
――相談に乗ったのに、かえって気まずくなることがあります。
なちゅ。:相談されて、解決策を提示したのに、友人と気まずくなった。「わかってくれない」と言われた。そういう経験はないでしょうか。
ADHDがやりがちな「ノーモーションの解決策提案」ですね。予備動作なしで、いきなり打ち返してしまう。こちらは真剣に考えて、いい答えを出したつもりなんですけどね。私もいまだに、たびたびやらかしています。
まず、ちょっと待つ
――やらかさないための対策はありますか。
なちゅ。:2段階あります。
まず、悩み事を聞いた瞬間に解決策を出したくなったら、ちょっと待つ。相手は「こういう悩みがあって」=「解決したい」とは限らないんです。ただ聞いてほしいだけの場面も、多々あります。
次に、ちょっとだけ「◯◯とか考えてますか?」と、解決策の頭出しをします。これで食いついてくるようなら「解決のターン」なので、思う存分話します。反対に、特に反応がなければ、一切のアドバイスを控えます。
全部出すか、全部しまうかではなくて、まず少しだけ出して反応を見る。それだけで、コミュニケーションの「事故」はかなり減ります。
解決とは、変化である。そして変化が怖い人がいる
――そもそも、なぜ正しい解決策が嫌がられるのでしょう。
なちゅ。:それには理由があります。
そもそもですが「解決」というのは、「変化をもたらすもの」なんですね。そして、「変化が怖い人」たちがいる。
悩んでいるのは嘘じゃないし、聞いてほしいのも本当です。でも、解決するための行動になると、途端に動けなくなる。
世の中の半分以上は、突然の変化を好みません。それぞれのペースで足踏みをして、ようやく前進のターンに移ります。中には、永遠に足踏みしていることを好む人もいます。
つまり「共感のターン」というのは、停滞ではないんです。変化を受け入れるための、足踏みの時間なんですね。
「わかる~」が、エンジンの燃料になる
――その足踏みの間、相手は何を受け取っているのでしょう。
なちゅ。:「わかる~」「そうなんだ~」という共感です。共感で安心を得ることが、前進するエンジンになるんです。
なぜ安心するかといえば、「私はおかしくない」「みんなもそうだ」と思えるから。多数派であるということに、安心を覚えるんですね。
ひとりで変わるのは怖い。でも「あなたの感じ方は普通だよ」という保証をもらえたら、変わっても群れから外れない。その安心が溜まって、ようやくエンジンに火が入るんです。
エンジンの仕様が、そもそも違う
――一方で、なちゅ。さんのような人たちはどうなのでしょう。
なちゅ。:アイデアマンで、同じ状況にとどまっていることが苦手なんです。思いついたら試したい。やってみて、こけたらまた立ち上がって、またこけるまで走る。傷だらけ上等人生ですね。
だから、「解決のターン」に入るのが構造的に早いんです。
――どちらが正しい、という話ではないと。
なちゅ。:これはもう、相性の問題です。どちらも悪くない。足踏みが長い人と、足踏みゼロで走り出す人がいるだけなので。
ただ、多数派の安心をエンジンにしていない私たちは、他人のエンジンにその燃料が要ることに、気づきにくいんです。
なので、自分がどちらの傾向が強いのかは、知っておいたほうがいいと思います。「共感のターンで立ち止まるのが苦手だ」と自覚しておくだけで、「いつの間にか人が離れていった」という状況は防げると思います。
なちゅ。
1980年生まれのワーキングマザー。発達障害(ADHD:注意欠如多動症)当事者。中学生と高校生の娘、そして夫も発達障害の特性を強く持つ。長女の発達障害診断をきっかけに、発達障害やそれに関連する分野の独学を開始。以来15年以上、自らの発達障害や子育てについてXを中心に情報発信を行う。仕事でも、障害福祉分野でマネジメント担当をしながら、個人事業主として講師業やスタートアップのサポートに従事。なかでも、自身の経験を活かした発達障害の親子のケアに力を入れている。
[医療監修]
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
医師・信州大学医学部教授
1988年東京大学医学部卒。医学博士。専門は発達精神医学。信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 教授。信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部 部長。長野県発達障がい情報・支援センター「といろ」センター長。









