すなわち、(1)子どもをもつ効用増大と所得補助(児童手当など所得補助、婚姻率向上、地域の子育て支援、出生意欲喚起)と(2)費用軽減(育児休業、保育サービス、夫の家事参加、地域の出生支援)である。
これらの政策項目は、広範囲にわたる「こども予算」の重点項目にほぼ対応している。
こども家庭庁の予算は、育児休業等給付(2025年度予算1.6兆円)、児童手当拡充(同2.2兆円)、子育て支援(大学の授業料減免、保育所運営費等、障害児支援等)(同4.0兆円)、の各項目であり、総計7.3兆円(前年度比1.1兆円増)となる。これらは、なんらかの経路で少子化対策となっている。
政府はこれらの予算がもつ出生数・出生率に対する効果は発表していない。しかし、この大規模な予算に基づく政策がどの程度の規模で出生率に効果があるかを検討することは重要であろう。
ここでは、おおよその目安として、内閣府(注6)による出生率の都道府県クロスセクション推計式によるパラメータを使用して、既婚者出生率への影響を求めてみることとしたい。
この推計は、合計特殊出生率を婚姻率と既婚者出生率に分けて行っている。多くの論者が、婚姻率の低下を少子化の大きな要因とする(注6)(注7)。
これは、日本の非常に低い非嫡出子率(日本はわずか2.4%、チリは75%、米国は40%、韓国は2.5%)からみて、非嫡出子をつくり、育てることは、非嫡出子の親への効用が低い(あるいは、社会的圧力なども勘案した子育て費用が高い)という推測が成り立つ。
このため、内閣府の分析をはじめとして、多くの実証分析は、婚姻率と出生率を分けて分析している。つまり、出生率の分析では、合計特殊出生率に対して婚姻率を調整した既婚女性(有配偶者)出生率を被説明変数に用いている。
約3兆円をつぎこんだ施策は
出生率を0.042ポイント押し上げた
内閣府(注6)の分析によれば、2020年までの出生数の減少には、女性数の減少(人口要因)、結婚の減少(有配偶者要因)、既婚女性の出産の減少(有配偶者出生率要因)の3つがすべてマイナスに寄与している。寄与度が最も大きいのは人口要因であるが、これら3要因は、2025年にかけてマイナスの寄与が拡大している。
注7 筒井淳也『未婚と少子化』PHP新書、2023年







