後二者が合計特殊出生率に影響している。有配偶者要因に対して有意になっている変数は、家賃、教育費(教育にかかる費用)、非正規雇用者割合である。また、有配偶者出生率要因に対して有意となっている変数は、家賃、若年男性賃金(所得要因)、潜在保育所定員率であった。

 子育て予算のうち、これらに影響するのは(1)児童手当拡充が実質的に賃金に及ぼす影響(有配偶者出生率に影響)、(2)教育費に対する大学の授業料減免(6500億円)(婚姻率に影響)、(3)保育所運営費等(有配偶者出生率に影響)、の3点であろう。

 図表11-2にあるように、それぞれの政策効果を足し上げると、予算額実績約3兆円で、合計特殊出生率を0.042ポイント押し上げているという推計となる。

図表11-2 少子化対策の出生率に及ぼす影響の推計同書より転載 拡大画像表示
『政府支出を考える』書影政府支出を考える』(原田 泰編著、井上智洋編著、中里 透編著、金融財政事情研究会)

 この数字は規模感として2024年の合計特殊出生率の低下分0.05にも及ばない。今後の予算拡充の出生率への政策効果をみると、まず保育所の施設整備は、現時点ではほぼ完全に充足しているので、これ以上の予算拡大は効果が非常に小さいであろう。

 残るのは所得補助を通じた政策効果である。仮に、児童手当と大学授業料減免で、合計特殊出生率を0.2ポイント上昇させようとすれば、33兆円もの予算が必要となる(注8)。

 これは非現実的な数字といってよい。これは非常にラフな推計であるが、少子化対策には予算規模の拡大によるそれなりの効果はあるものの、出生率の低下トレンドをとめるだけの効果はまったく期待できないということとなる。なお、こうした効果を維持するためには、この程度の支出を毎年度行う必要があることには注意が必要である。

注8 これら2つの政策は、予算では2.85兆円(2.2+0.65)を使い、0.017(0.008+0.009)ポイントの出生率上昇の効果を得る。出生率0.2ポイントの上昇を得るには、この11.8倍(0.2÷0.017)の予算が必要となる。これは、予算額33兆円に相当する(2.85×11.8)。