「ヒット作が続かず業績が落ちる」と市場に見放された株が、実はお宝株だったということがある。『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』には、若きバフェットがディズニー株を割安で手に入れた際の話があり、そのエピソードからは決算書に載らない価値を見抜くヒントが得られる。本連載では、本書の内容から、ウォーレン・バフェットの投資術をお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

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「減益予想」は売りの合図か

「来年は利益が減りそうだ」というニュースを見て、慌てて株を売ったことはないだろうか。だが、悲観が広がるときこそ、株を安く買える好機だったということもある。

 本書には、1966年にバフェットがディズニー株を買ったときの様子が書かれている。当時のディズニーは映画『メリー・ポピンズ』で成功したが、制作中の作品がなかった。そのためウォール街では、成長の見込みはほぼなく、株価はおそらく下がると見られていた。

 ところが、その頃のディズニー株は、PER(株価が1年分の利益の何倍かを示す数字)が10倍を大きく下回る安値で、しかも現金が負債よりも多かった。

決算書に載らない「お宝」

 バフェットが注目したのは、過去の映画という財産だ。

 映画の資産価値はゼロと評価されるため、会社の財産リストである貸借対照表には現れない。つまり、帳簿の外に目に見えない大きな価値が隠れていたのである。

例えば『白雪姫』が素晴らしいのは、作品が完成して制作費が会計処理された後でも、何度でも再利用することができるということだ。七年ごとに『白雪姫』に熱中する新たな子どもたちが出てくるのだ。(『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』より)

 キャラクターの人気も、通学バッグやTシャツ、テーマパークなど様々な形で利用できる。

 著者は、利益を増やすのに追加資本がほとんど必要ないビジネスは「金のなる木」になるかもしれないとし、非常に高い使用資本利益率を実現できると述べる。

 使用資本利益率とは、投じたお金でどれだけ効率よく稼げるかを示す数字だ。一度作った動画が、追加の撮影なしに何年も再生され、収益を生み続けるようなものだと考えるとわかりやすいだろう。

映画館に足を運んだ理由

 本書によると、バフェットの調査で最も大切だったのは、子どもたちに囲まれて映画館で『メリー・ポピンズ』を見ることだった。その場で、子どもたちの作品への愛情を実感したのだ。

 バフェットは投資仲間のチャーリー・マンガーとディズニーランドを訪れ、ウォルト・ディズニー本人にも会った。そこで見た新しい乗り物には1700万ドルがかかっており、これは会社の時価総額(株価から計算した会社全体の値段)のおよそ5分の1にあたる。つまり会社全体が、乗り物わずか5つ分の値段で売られていたのだ。

 バフェットは、もしディズニーが非上場で、ウォルト・ディズニーがベンチャー・キャピタル(成長企業に出資する投資会社)や大企業に出資を頼みに行けば、3億~4億ドルと評価されただろうと語る。それなのに市場で8000万ドル程度の値段しかつかなかった理由を、次のように説明している。

毎日マーケットで買えるというまさにその事実から、(八千万ドルが適正評価だと)納得してしまっているのです。あまりに慣れ親しんだ企業であるため、見落としてしまうのです。(『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』より)

 著者は、製品やサービスの質は日々の生活で観察できると述べる。身近な商品が長く愛されているかに目を向けると、投資先を探す手がかりになるかもしれない。

バフェットも悔やんだ売り急ぎ

 バフェットの投資組合は400万ドルでディズニー株の5%を取得し、翌年620万ドルで売却した。55%の利益だが、ディズニーの株価はその後、1967~1995年にかけて138倍になった。本書には、バフェット自身が、非常に素晴らしく思えた買いの決断を翌年の売却で無駄にしたと振り返り、後悔していると書かれている。

 著者は、年金などの大きなお金を動かす機関投資家は短期を重視することがあると指摘したうえで、次のように述べる。

直近の業績の停滞期間が終わった後にその企業がどうなるのかを考え、機関投資家を出し抜くように心がけよう。(『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』より)

 ディズニーの事例から見えてくるのは、世間の評判に流されず、自分の目と足で企業の実力を確かめ、長く持ち続ける姿勢だろう。

「減益予想」で売られている株を見かけたら、その会社の数年後の姿を一度考えてみるといいかもしれない。