関心を見せすぎないことが
商談での立場を有利にする
一方で、まったく逆の行動が求められるケースもあります。
価格・条件の交渉、相手が強く売り込んでくる商談のようなケースです。
このような状況では、どれだけこの商談に消極的かを相手にアピールすることが主導権を握る鍵になってきます。
相手から提示された条件があなたにとって悪い話どころか、むしろいい条件であったとしても、それをあからさまに表に出してしまうのは禁物です。相手に見透かされて、不利な条件を提示されかねないからです。たとえば、
・提示された価格や条件に対し「興味・関心の表情」(編集部注/眉毛全体を上げる表情を、筆者はこう呼んでいる)で反応する。
・相手の顔と資料を熱心に見ながら話を聞く。
・胸を張った姿勢をしている。
・身を乗り出して相手に近づき積極的に質問する。
といった振る舞いは、このケースではNGです。商談に対して積極的であることがわかりやすく相手に伝わってしまうからです。
もちろんそうすることで、相手と良い関係性を築き、交渉を成功させるケースもあるとは思います。
ただ、多くの場合、「商談をどうしても成立させたい」という気持ちは、「弱み」にもなり得るのです。そこを相手に突かれて主導権を握られてしまう危険性があるということを、忘れてはなりません。
これは交渉心理学で言う「関心の非対称性」による現象です。当事者間で関心の度合いに差があると、より関心の低い側に場の主導権を握られやすくなる傾向があるのです。
たとえば、若手アーティストが多く所属するプロダクションと、音響機材メーカーが共同で音楽イベントを企画したとします。この企画は、両社にとって宣伝効果が見込めるため、本来であればWIN-WINの関係です。
しかし同時にどちらも「できるだけ出費は抑えたい」という考えもあります。そのため、条件交渉では単に「協力したい」「メリットが大きい」と伝えるだけでは不十分です。むしろ重要なのは、「自社にとっては、そこまで必須の案件ではない」というスタンスを保つことです。
『一瞬で人の心を操るマインド・ハック この「表情」「しぐさ」には、誰も逆らえない!』(荒木シゲル、三笠書房)
なぜなら、「このイベントをぜひとも開催したい」「多少赤字になってもメリットがある」という印象を与えてしまうと、相手に足元を見られかねないからです。
こちらのステイタス(編集部注/即興演劇で用いられる、登場人物間の力関係を示す言葉。本記事では、その場で強い影響力を持つ状態を「高いステイタス」、弱い立場を「低いステイタス」とする)は下がり、「であれば、取引を成立するかわりに条件をのんでほしい」と相手に譲歩を迫られてしまうかもしれません。
良い条件で着地させるためには、メリットを感じさせつつも、依存していない立ち位置を演出することが、ひとつの有効な戦略になるのです。
関心を示すべきか、それとも示さないべきか、場に応じて適切な判断と振る舞いが求められるわけです。







