業界紙、専門誌を訪ねて回るこの連載。第3回は、太陽光発電に特化した新型の専門誌「PVeye」について、発行人に話を伺った。

洗練されたデザインが目をひく「PVeye」 Photo by Jun Morikawa

 相次ぐ有名誌の廃刊などで暗い話ばかりの出版業界――。右も左も暗い話にはことかかないが、そんな陰鬱な雰囲気はどこ吹く風とばかりに、東日本大震災以降に新たな雑誌を一から立ちあげた気骨ある記者がいる。

 2012年3月に創刊したばかりの太陽光発電の専門誌「PVeye」の発行人である川副暁優さんは現在36歳。元々は、雑誌社でテクノロジー系の記事を執筆していたが、11年3月11日の東日本大震災を契機に独立し、仲間らとともに新媒体を立ち上げることを決めたという。

「震災3日後に、東京からレンタカーを借りて、被災地へ向かったのですが、福島第1原発の事故が深刻になっていた。錯綜する情報が信じられず、太平洋側を避けるように、新潟経由で宮城に行きました。要は怖かったんですね。この時エネルギー問題について真剣に考えるようになりました」

1年半で認知度上昇
関係者“必読”の媒体に

 それ以前からエネルギーの記事への関心は高く、何度も記事を執筆していたが、特に太陽光発電には「世界中どこでも『昼』があり、どこでも発電できる」という点や小規模でも自立分散で発電できる点に魅力を感じ、雑誌のテーマに据えたのだ。

 その後、国が再生エネルギーの普及策を打ち出したことで、導入の機運は一気に高まった。特に、太陽光は2013年3月までの認定量が原発20基に相当する2000万キロワットと“バブル”の様相を見せるまで盛り上がっている。

 初めてエネルギー事業に乗り出す業者も急増するなかで、PVeyeは存在感を高め、少なからぬ業界関係者が「太陽光をやるなら必読」と話すほど。創刊1年強の新興媒体にもかかわらず、タイムリーなニュースと鋭い分析を売りに、部数を大きく拡大、業界に新風を巻き起こしているのだ。