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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

国を挙げて研究開発投資に邁進する韓国
日本が対抗していくには明確な産業振興策が必要だ

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第70回】 2013年8月9日
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 韓国が国家戦略としてハイテク立国を目指しているのは、紛れもない事実である。R&D支出のGDPに対する比率を現在の4.03%から5%にする目標を持っている。国家として数値目標を持って取り組んでいる国は珍しいのではないだろうか。

 サムスンの社内での出世競争は米国よりすごい。日本とは天と地ほどの差がある。能力在庫を社内で一元管理しているのは日本と同じだが、ここまで差はつけていない。社員を一元管理しながら、理工系の優秀な社員をどのように処遇していくかは日本の課題である。

 こうした韓国の状況を踏まえて、日本の成長戦略はどうすべきなのだろうか。

 日本は「品質の良いものを安く作る」ことで世界市場を席捲した。「モノ作り」が日本の特権だった。エズラ・ボーゲル氏が『Japan as NO.1』を書いたのが79年だった。80年代はボーゲル氏の予言どおり「日本の世紀」になった。それが90年代に入って、IT革命が起き、モノづくりがアナログからデジタルに変化するにつれ、急速に競争力を落としてしまった。

 今からサムスンやLGと張り合おうとしても勝ち目はない。韓国が得意とするスマホ市場も、遠からず成熟する。サムスンもやがて中国に真似をされ、追われる身になるだろう。たとえ、エレクトロニクスで中韓台に負けようとも、日本の技術開発の裾野は中韓台にはない広がりを持っている。別の分野で勝負をすればよい。

 それは生命科学と新機能素材とコンピューターサイエンスではないかと思う。山中教授のiPS細胞の発見は画期的であった。再生医療と遺伝子に基づいた治療の研究はますます活発になるだろう。医療機器も大きな成長が見込める分野である。この分野では韓国も中国も力を入れているが、日本がまだ優位性を維持している。

 新機能素材は化学産業が強い日本ならではの得意技である。韓国は消費者向けのエレクトロニクス製品に強いものの、素材のひとつである化学材料は日本からの輸入に大きく依存している。米国の航空機産業も日本の新機能素材に依存している。ボーイング787機の部品の約半分に日本の製品が使われている。この優位性はこれからも維持していかなければならない。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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