次の帰宅予定日の前日、私とパートナーは拓也さんが現れるのを待つため、午前9時過ぎからクレジットカードの明細にあったラブホテルがある最寄り駅の改札前で張り込みを開始しました。

 インカムにホームで監視していたパートナーの声が入りました。

「到着列車に対象者確認、改札まであと2分です」

 改札を抜けてきた拓也さんの隣には、一人の女性がいました。女性は拓也さんのキャリーバッグの持ち手に自然に手を添えていて、二人には距離も遠慮もありませんでした。

 二人は並んで改札を抜けて、いつものであろうホテルに入りました。二人がホテルを出たのは翌日の夕方でした。

 誰と誰がどこに何時何分に出入りしたか、はっきり分かる証拠が撮れました。

 その夜、自宅に着いた拓也さんはいつものように玄関から真っすぐ浴室に向かったそうです。

 私たちが記録したのは東京での1日だけです。けれどその記録は、美咲さんが見ることのできなかった赴任先での5カ月を語っていました。

夫の浮気相手の正体
妻がすぐに決めなかったこと

 私は、信頼できる弁護士を美咲さんに紹介しました。

 弁護士は報告書に目を通して「赴任先の写真は1枚もありませんね。でも、これなら十分に戦える材料になります」と言ったそうです。

 美咲さんは、報告書の写真をしばらく見つめたまま「夫が帰ってくる日を息子と楽しみにしていました。夫の好物の天ぷらをたくさん作って。まさか帰ってくる前の日に、同じ東京にいたなんて」と唇を震わせて語りました。

 美咲さんは、離婚するかどうかをすぐには決めませんでした。

 前述のアンケート調査でも、単身赴任中の浮気の後に離婚しなかった人は65.7%に上ります。

 証拠を基に美咲さんが拓也さんを問い詰めた結果、問われるままに女性の素性や不倫に至るまでを、意外すぎるほど素直に語りました。

 女性とは、同僚とよく行く居酒屋で知り合い、拓也さんが既婚者であることを分かった上で、猛烈なアプローチにより深い仲になったそうです。

 拓也さんもダメだとは思いつつ、単身赴任の寂しさから関係を続けてしまったのです。