管理職に必要なのは
「人を動かす能力」

 結論から言えば、現場では能力が低いように見える人でも、ヒューマンスキルが高ければ管理職として十分に活躍できます。

 経営学者ロバート・カッツは、マネジメントに必要な能力を大きく3つに整理しています。

 現場で仕事を遂行するための「テクニカルスキル」、人と関わり、人を動かすための「ヒューマンスキル」、そして物事を概念化して将来を構想する「コンセプチュアルスキル」です。

 一般社員の段階では、テクニカルスキルの比重が大きい。自分が専門知識や技術を身につけ、自分で動いて成果を出すことが求められます。

 ところが管理職になると、自分一人がどれだけ仕事をできても十分ではありません。

 自分より優秀な専門家もいれば、自分とは価値観の違う部下もいる。その人たちの力を引き出し、同じ方向に動いてもらい、チームとして結果を出す必要があります。

 ここで重要になるのがヒューマンスキルです。

 先ほどのITエンジニアの例で考えてみましょう。

 最新技術については部下のほうが詳しいかもしれない。だからといって、そのプロジェクトマネージャーが「能力の低い上司」だとは限りません。

 優秀な技術者を適切に配置し、それぞれの強みを生かし、意欲を引き出し、プロジェクト全体を前に進めることができるなら、それは立派な管理職の能力です。

 逆に、テクニカルスキルが非常に高くても、人を動かすことができなければ、管理職としては苦労します。

「能力が低いのに出世した」のではなく、評価している能力の種類が違うのです。

第3回記事<「絶対に管理職にしちゃダメな人」が会議で発するNGワード>は9月27日(日)14時00分に公開されます。前川孝雄氏をフォローすることで取材記事(全5回)をメールでお送りすることができます。

優秀なプレイヤーほど
管理職になって挫折する

 日本企業では、今でも「現場で成果を出した優秀なプレイヤーを管理職にする」という人事が少なくありません。

 しかし、その人たちは課長になった瞬間に壁にぶつかることがあります。

 プレイヤー時代の成功体験が強い人ほど、「自分ができたのだから、部下もできるはずだ」と考えやすいからです。

 ところが、管理職の仕事はプレイヤーの延長ではありません。

 私は、今の管理職の仕事は「多様な部下の心を動かすプロフェッショナルな仕事」に変わってきていると考えています。