5種類になったといっても、敬語の基本的な使い方やその背景となる「話の中の人物間の相互関係を大事にする」という、敬語の精神が変わったわけではない。また、最近では「この資料、コピーを取ってくれるかな?」という言い方も、「コピーを取るように!」という命令の敬語表現の一種と解釈されている。
最近、目に、いや耳に付くものとして、自分の親のことを「お父さん」「お母さん」と人に言う若い人が増えたように思う。これは、ビジネスマンが自分の会社の社長を取引の相手方に「うちの社長さん」と呼ぶのと同じくらい恥ずかしいことである。もっとひどくなると「お客様がこちらに参られましたら、弊社の社長さんがお越しになって、話されます」と言い出しかねない。
「逮捕させていただきます」は
なぜおかしいのか
また不必要な「させていただく」もよく耳にする。この言葉は「します」の謙譲語にあたるものと言えるが、とりあえず「させていただく」と言っておけば失礼に当たらないだろうという、もはや丁寧語感覚で使われているようである。
文化庁「敬語の指針」で「させていただく」は原則として相手の「許可」を得て行う場合に用いるとされている。しかし先ごろ、ついにテレビのドキュメンタリー番組で、驚きの「させていただきます」を見た。
交通違反の反則金を払わない人を逮捕する警察官が、「逮捕させていただきます」と告げていたのである。逮捕は裁判官発行の逮捕状に基づいて強制的に執行されるものであり、逮捕される者による「許可」は必要ないし、「逮捕はダメです」と言えないのは当然である。おそらくテレビカメラが回っていたために、警察官は市民に対し、「では、逮捕します」と言うぐらいの丁寧語の意識で出てきた言葉だったのだろう。
この意味からすると、よく耳にする「説明責任」を求められた人の「回答は控えさせていただきます」という表現もおかしなことが分かる。
尋ねる相手が回答を求めており、答えることはすでに許可されているので、「させていただきます」ではなく、「できません」と言うべきところを、謙譲語のデコレーションであいまいにしていることになる。







