このドコモ経済圏の拡大という文脈で言えば、IGアリーナのような施設も同じくらい効果的だ。イベントを開催すれば、アリーナには毎回1万~1万7000人の観客が訪れる。彼らに関連する映像やイベント、ファンコミュニティなどを紹介していけば、ドコモ経済圏はさらに拡大する。

 また、IGアリーナの館内は完全なキャッシュレスで、チケットや飲食、グッズの購入はクレジットカードや電子マネー、バーコード(QRコード)決済が基本だ。アプリでのモバイルオーダーにも対応しているため、NTTドコモの決済サービス「d払い」や「dポイント」の利用者増に寄与する。

 こうしたデータは、プライバシーや個人情報保護に十分配慮したうえで、利便性の向上やスポンサー施策の高度化、地域との連携などに活用されている。

IGアリーナはIOWNの
実験場にもなっている

 もちろん、当初の目的だった技術のショーケースという点でも意味がある。現在、NTTグループは「IOWN(アイオン)」という最先端の光技術を用いた次世代情報通信基盤の開発を進めている。従来の「電気」によるデータ処理や通信を「光」に置き換えることで、大容量、超高速、低遅延、低消費電力を実現する技術だ。IOWNはIGアリーナにも導入されており、さまざまな“実験”が行われている。

『愛知県は天下を取るがね』書影『愛知県は天下を取るがね』(篠原 匡、新潮社)

 2026年2月にIGアリーナで開催された「東京ガールズコレクション(TGC)inあいち・なごや」では、同時刻に横浜BUNTAIで開催された音楽フェス「TOKYO GIRLS MUSIC FES. 2026 by TGC」をIOWNでつなぎ、それぞれのイベントに登場したアーティストをシンクロさせた。IGアリーナで開催されていたアイドルグループFRUITS ZIPPER(フルーツジッパー)のステージに、BUNTAIに出演中のCANDY TUNE(キャンディーチューン)が映像で参戦。IGアリーナのステージでリアルのFRUITS ZIPPERと映像のCANDY TUNEが一緒にパフォーマンスを披露したのだ。実際の映像を見ると、1秒のズレもなく完全に同期していた。

 このように、アリーナは貸し館業としての収益だけではなく、金融・決済、会員・データ、コンテンツ、テクノロジーを束ねる“体験装置”としての側面も持つようになっている。その未来が見えていたからこそ、NTTドコモはIGアリーナで代表企業に名乗りを上げ、本格的なアリーナ経営に乗り出したのだ。