井上尚弥選手井上尚弥選手 Photo:SANKEI

大型イベントや海外の人気アーティストが名古屋を素通りする――。かつて「名古屋飛ばし」と呼ばれた状況が、いま変わりつつある。2026年には愛知・名古屋アジア大会が開催され、さらに井上尚弥の世界戦をはじめ、大型イベントが相次いで開催されるIGアリーナも誕生した。その運営権を取得したのが、通信大手のNTTドコモだ。なぜドコモはアリーナ経営に乗り出したのか。そこには、1万人超の観客を取り込む「ドコモ経済圏」拡大の狙いがあった。※本稿は、ジャーナリストの篠原 匡『愛知県は天下を取るがね』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

IGアリーナの登場で
名古屋飛ばしは過去のものに

 2025年9月14日、名古屋市のIGアリーナで、ボクシング世界スーパーバンタム級主要4団体統一王者、井上尚弥(大橋)の防衛戦が開催された。相手は、2016年リオデジャネイロ五輪銅メダルの実績を誇る同級随一の実力者、世界ボクシング協会(WBA)同級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)である。

 結果はご存じの通り、判定決着になったものの井上がアフマダリエフを終始コントロール。パウンド・フォー・パウンド(PFP、全階級を通じた最強ランキング)上位の実力を世界に見せつけた。

 この歴史的な一戦を感慨深く見つめていた人物がいる。愛知県知事の大村秀章だ。

「名古屋飛ばし」という言葉があるように、名古屋はこの手の大規模イベントがなかなか開催されないことで知られている。この言葉は、海外の著名アーティストや東海道新幹線「のぞみ」の一部が名古屋を素通りしたことに端を発している。それ以来、愛知県民は自虐的に、それ以外の地域の人は半ばネタ的に「名古屋飛ばし」という言葉を使う。

AEGのアリーナ経営ノウハウが
随所に生かされている

 IGアリーナは公共施設にもかかわらず、グローバル基準のアリーナ経営が実践されている。それを可能にしたのは、株式会社愛知国際アリーナへの米AEG(アンシュッツ・エンターテインメント・グループ)の参画だ。