名古屋駅前や栄地区では大規模再開発が進められているが、リニア工事の先行きが見通せず、暗雲が垂れ込めている。地元の財界や自治体の関係者は、この再開発を冷ややかに見ており、期待している様子は見られない。特集『名古屋沸騰中 産業・教育・スポーツ』(全11回)の#6では、名駅・栄再開発の課題に迫る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
「スーパーメガリージョン」構想に暗雲
再開発に水を差すリニア工事の遅滞
「東京~大阪間でリニアが開業すれば(東京・大阪・名古屋の)3大都市圏が約1時間で結ばれ、巨大な都市圏『スーパーメガリージョン』が誕生し、約7000万人の交流圏が生まれます」
2019年に名古屋市が作成した資料「名古屋駅駅前広場の再整備プラン 中間とりまとめ」には、こうしたセンセーショナルな文言が躍っている。
これが実現したならば、東京や大阪、海外などから名古屋への集客(ビジネス客・観光客)を見込め、ひいては名古屋・中部地区への流入人口も期待できる。地元自治体の事業に呼応して、デベロッパーがオフィスやホテル、タワーマンションなどの再開発計画を活性化させれば、中部地区の経済浮揚にもつながるだろう。
実際に、自治体の取り組みと歩調を合わせるかのように、名古屋の中心街・栄でも再開発が進められてきた。中部日本ビルディング(中日ビル)が建て替えられ、24年春の全面開業を控える他、最高級ブランドホテル「コンラッド」が26年に開業予定など、観光客増加を意識した開発も少なくない。
ところが、である。スーパーメガリージョン誕生の前提となっている「リニア中央新幹線開業計画」に暗雲が垂れ込めている。27年に予定されている東京・名古屋間の開業が見通せなくなっているためだ。
別の問題も浮上している。取材を進めると、名古屋駅(名駅)や栄駅周辺の再開発には、リニア工事の遅延以外にも課題があり、地元の財界や自治体の関係者が冷ややかに見ている実態が明らかになった。
次ページでは、名駅前・栄の再開発事業の課題を探るとともに、再開発の「主役」ともいうべき地元企業名を明らかにする。地域活性化の鍵を握るのはどの企業なのだろうか。