愛・地球博記念公園には温水プールがあったが、フロンガスの規制強化で設備が使用できなくなり、廃止することになった。通常であればそのまま解体処分だが、ジブリが倉庫として使ってくれれば建物をそのまま活用できるので一石二鳥だ。それ以降、大村知事は東京出張があるたびにスタジオジブリを訪問した。

 一方、当時のジブリには、さまざまなところからジブリ作品のテーマパークを作らせてもらえないかという提案が来ていた。ただ、いわゆるテーマパークはジブリの世界観に合わないと消極的だったようだ。

 その中にあって、愛知県の提案は公園の中に倉庫を作るという話でテーマパークではない。しかも、知事自ら足を運んでくれている。スタジオジブリがジブリパーク構想にゴーサインを出した背景には、そうした事情があった。

ジブリパークはいまや世界に
通用する愛知のシンボルになった

 2017年5月に愛知県はジブリパーク構想についてスタジオジブリと合意。翌2018年12月にジブリパーク整備構想の概要を発表した。

 具体的な整備方法は、県が公園事業として施設を整備する一方、スタジオジブリは整備に必要なデザインなどの作成及び事業全体の企画監修を担当、スタジオジブリと地元の中日新聞社が出資した株式会社ジブリパークが施設の運営や企画展の展示を手がけるという形である。

『愛知県は天下を取るがね』書影『愛知県は天下を取るがね』(篠原 匡、新潮社)

 2020年7月に第一期工事がスタート。「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」の3エリアは2022年11月1日に、「もののけの里」は翌2023年11月1日、「魔女の谷」は2024年3月16日に開園した。県が負担した整備費は全体で約340億円である。

 先ほども書いたように、ジブリパークの入場者数は開示されていないが、「ジブリパークから流れる観光客は増えている」(犬山市観光協会の後藤真司事務局長)という声が上がるように、愛知や名古屋に観光客を呼び寄せる吸引力になっているのは間違いないようだ。

「これまで海外に行くと『愛知と言えばトヨタ』というイメージでしたが、最近は『愛知県にはジブリパークがある』と言うと、わっと盛り上がる」。

 そう言って、大村知事は相好を崩すが、それだけジブリ作品がグローバルで愛されているということだろう。