「成功率90%」と「失敗率10%」。意味することはまったく同じなのに、なぜか受ける印象は大きく違う。私たちは自分で冷静に判断しているつもりでも、実は「言葉の選び方」によって簡単に選択を変えてしまう。なぜ同じ事実でも、伝え方が変わるだけで判断まで変わってしまうのか。その背景を『すべて本能のせい』から伝える。(ダイヤモンド社書籍編集局)
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「成功率90%」と「失敗率10%」は同じなのに
「この手術の成功率は90%です」
そう聞くと、「かなり高い確率で成功する」と感じる人は多いのではないだろうか。
では、こう言われたらどうだろう。
「この手術は10%の確率で失敗します」
数字が示している事実は同じだ。
それでも、「失敗するかもしれない」という不安が、先ほどより大きくなったように感じないだろうか。
私たちは、何かを判断するときには情報を客観的に検討し、自分なりに結論を出していると思いがちだ。
しかし実際には、「何を伝えられたか」だけではなく、「どのように伝えられたか」によっても判断は変わる。
なぜなら、人間の脳は情報の中身だけを受け取っているわけではないからだ。
同じ事実でも「言い方」で判断は変わる
『すべて本能のせい』では、そのとき脳内で起きていることを次のように説明している。
脳の「扁桃体」や「島皮質」といった、感情を司る回路の影響を非常に強く受けながら行われているのです。
ここで重要なのは、扁桃体が反応しているのは「事実」そのものではなく、その事実が持つ「意味」だという点です。
たとえば「ライオンがいる」という情報そのものに扁桃体は反応しません。
それが「自分にとって危険だ」という意味を持つからこそ反応するのです。
特に、損失やリスクに関するネガティブな情報は、脳の警戒センサーである扁桃体の活動を高め、私たちに「それを避けよう」という回避行動を促します。
一方で、利益や成功を強調するポジティブな表現は、脳の報酬系、特に「側坐核」やドーパミンの通り道を活性化させ、私たちにそれを受け入れさせようとします。
また、脳の「内側前頭前野」という場所は物事の価値を評価していますが、その評価も情報の見せ方によって変化します。
さらに、言語を処理する「側頭葉」と感情の回路が強く連携しているため、言葉そのものが感情的な意味を帯びるようになり、表現の違いが私たちの意思決定にダイレクトに影響を与えることになります。
「事実」だけを見ているつもりでも、脳は「意味」に反応している
「成功率90%」という言葉からは「成功」というポジティブな意味が強調される。
一方、「失敗率10%」では「失敗」というネガティブな意味が前面に出る。
数字としてはまったく同じでも、脳が受け取る「意味」は同じとは限らない。
だからこそ、「自分は数字や事実を見て冷静に判断している」と思っていても、知らないうちに言葉の枠組みに影響されることがある。
広告やセール、保険や医療、仕事上の提案など、私たちは日々さまざまな「言葉」を通して情報を受け取っている。
何かを決断するときには、「何が書かれているか」だけでなく、「もし別の言い方をされたら、自分の判断は変わるだろうか」と考えてみる。
「成功率90%」を「失敗率10%」に置き換えてみるように、同じ情報を反対側から眺めてみるだけでも、言葉の印象と事実そのものを切り分けやすくなるかもしれない。



