ピカチュウPhoto:SANKEI

ポケモン、アンパンマン、ウルトラマン――日本では、なぜこれほど多くの「キャラクター」が生まれ、そして集められてきたのか。実はそのルーツをたどると、戦前の動物図鑑や、日本の子どもたちに身近だった昆虫採集に行き着くという。生き物に序列をつけず、さまざまなものを「並べて集める」日本人の独特な世界観とは何なのか。ポケモンを手がかりに、養老孟司氏と柳瀬博一氏が、その意外なつながりをひもとく。※本稿は、解剖学者の養老孟司と東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授の柳瀬博一『虫とマンガと日本人 養老孟司のキャラクター論』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

生き物に序列をつけない
図鑑は「日本人」っぽい

柳瀬 実は今日、1938(昭和13)年に誠文堂新光社から刊行された古い図鑑を持ってきたんですよ。『内外動物原色大図鑑』(新装版)っていうんですけど。1980年、私が高校1年生になったときに、蔵書家だった祖父から戦前の図鑑を3冊プレゼントされたんですが、そのうちの1冊。あと2冊は三省堂の『原色千種昆虫図譜』『続・原色千種昆虫図譜』(1933年)で、北杜夫さんが『どくとるマンボウ昆虫記』で言及されていた本です。

養老 これが『内外動物原色大図鑑』か。分厚いなあ。北隆館の昆虫図鑑より大きい。1400ページ近くあるのか。はじめて見ました。これは“お宝図鑑”ですな。三省堂の『原色千種昆虫図譜』シリーズは有名ですけどね。

柳瀬 中身がまた面白いんです。すべての動物がずらっと並んでいる。

養老 哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、円口類、原索動物、節足動物、軟体動物、棘皮動物、毛顎動物……。ほんとだ。チンパンジーから原生動物まで全部載ってるね。しかも手間がかかっている。あらゆる動物が緻密なイラストで描かれてる。解説も詳細ですね。

図 柳瀬さんが祖父から受け継いだ『内外動物原色大図鑑』(誠文堂新光社、1938年、新装版)同書より転載 拡大画像表示