柳瀬 フランスでは特殊なのに、日本では普通。何が違うんでしょうか。

養老 やはり自然の「濃さ」じゃないかな。日本はとにかく身の回りに生き物が多い。とりわけ昆虫が多い。だから子どもたちは小さい頃から目の前の生き物を観察している。

柳瀬 自分もそうでした。物心ついたとき、家の前の石をひっくり返して、ダンゴムシをいじってた。

養老 子どもはみんな、ダンゴムシ、好きだよね。ぼくはといえば、鎌倉の家の玄関先でアリを観察するのが好きでした。小児科医だった母親が往診に出かけるときに(この子は何見てるんだろう)と思ったらしい。数時間後、帰宅すると、まだぼくがアリを観察しているのを見つけて(この子、大丈夫かしら)と。

『虫とマンガと日本人 養老孟司のキャラクター論』書影『虫とマンガと日本人 養老孟司のキャラクター論』(養老孟司、柳瀬博一 PHP研究所)

柳瀬 (笑)虫好きの本領発揮じゃないですか。ダンゴムシやアリでいいんですよね。立派な虫や、パンダやトキみたいな希少種じゃなくていい。

養老 生き物が好きってことに序列なんかないんだよ。いろんな生き物が好きでいい。

柳瀬 それってさっき話した「ポケモン」の世界ですね。

養老 そうなの?

柳瀬 「ポケモン」のキャラクターには、動物だけじゃなくて、植物も、恐竜も、ドラゴンみたいな空想の生物も交じっています。序列がない。多様性だけがある。『ウルトラマン』の怪獣も、『仮面ライダー』の怪人も同じです。

養老 いろんな生き物を分け隔てなくずらっと並べる世界観は、とっても日本的だろうね。