養老 ぼくの勘が当たりました。10年ほど前からスマホ片手に町中に出かけ、隠れているポケモンを探すゲームがすごく人気だよね。

柳瀬 「ポケモンGO」ですね。子どもだけではなく大人にもはまる人が多くて、大変な話題を呼びました。

養老 遊びの種類としては、まさに昆虫採集です。

柳瀬 養老さんが虫を捕まえて標本を箱棚に入れていくのと同じで、子どもたちは捕まえたポケモンで“マイ図鑑”をつくっている。飼育する=友だちになる、という感じですね。「ポケモン」みたいなゲームって、キャラクターをどれだけ集められるか挑戦したい、コンプリートしたいっていう欲望が、プレーヤーに芽生えますよね。ちなみに養老さんは、もうすでに日本のゾウムシをコンプリートしているんじゃないですか。

養老 ムシの世界を甘く見てもらっては困ります。まだ道なかばですよ。虫をコンプリートしようと思ったら人生何回あっても足りない。その意味では「ポケモン」より難しいゲームですな。

図 『成田亨 作品集』(羽鳥書店、2014年)より。(柳瀬氏私物) 同書より転載 拡大画像表示

昆虫博士・ファーブルと
日本人の共通点

柳瀬 日本人はなぜファーブルが好きなんでしょう。

養老 ファーブルはフランス人でありながら、虫に向ける感覚が日本人と通じる部分があるからじゃないかな。さまざまな種類の昆虫を細部まで視る。形だけじゃなく、行動までも。何時間も何日も何年もずっと。そんな観察の成果が『ファーブル昆虫記』です。

 己の観察眼を昆虫に徹底的に向ける、というのは、フランス社会ではかなり特殊だったはずです。一方、日本では普通の子どもが当たり前のように虫を見て、捕まえている。