若手社員の肩に手を置いて話しかける上司写真はイメージです Photo:PIXTA

「特に不満はなさそうだし、仕事も順調」。そう思っていた若手から突然、退職を告げられた経験はないだろうか。1on1で定期的にコミュニケーションを取っていても、肝心な問いが抜け落ちていることがある。転職が当たり前になった時代、上司や人事は若手に何を聞くべきなのか。※本稿は、研究者の古屋星斗『あの若手はどうして辞めないのか』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

この会社を辞めないことを
前提にしていないか

 筆者が問題意識を持っているのは、“転職”が職業人生の「選択」である一方、“転職をしない(在職し続ける)こと”が「選択」ではなかったことである。

 いまの仕事をなんとなく続けていれば、選択を迫られることはない。しかし、その意思決定なく仕事を続けたところで、労働市場が変貌しつつある企業社会において、組織との良い関係を構築できるのだろうか。

 この問いは、「辞めない理由」を通したコミュニケーションの重要性を組織側においても高めている。実際に、「辞めない理由」を伝えている若手は自組織の中核を担う潜在力があることがわかってきた。

 まだ厳密な因果推論はできないため、その逆の関係になる――つまり、「辞めない理由」が言語化される――ことでいまの仕事や自社に対するコミットメント(積極的な関与)が高まる可能性もある。

 しかし現状、ほとんどの若手は上司や人事に「辞めない理由」を伝えておらず、その理由も「聞かれないから」であった。なぜ聞かないのか。