「地頭」を鍛えたい! でも、今さら・・・と思いがちだが、木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』で、「地頭はセンスではない。スイッチの押し方さえわかれば変えられる」という。
そんな木下氏が考える「一瞬で地頭が悪いと思われる人の特徴」とは? 本書から一部を抜粋して特別配信する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

地頭の悪い弁護士の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

地頭が悪い人の判断グセ

あなたのまわりにも、知頭だけで仕事をしている人がいるはずです。
本書で地頭と知頭の違いをくわしく紹介しましたが、知頭の人は定型業務や反復作業に強い一方、未知の状況や前例のない問いには弱いのです。

Bさんは一流大学を優秀な成績で卒業しました。
履歴書だけを見ると誰もが「できる人」だと思うでしょう。

ところが職場では「あの人は地頭が悪い」と言われています。

理由は、能力不足ではなく、知識量が多いために、物事を常に「知っているか、知らないか」だけで判断するクセがついていたからです。

新しい仕事を頼まれると、「やり方を知らない=できない」とすぐに決めつけ、自ら考えようとしない。マニュアルに書いていない場面に出くわすと手が止まってしまう。

これは、知頭だけで仕事をしている典型的な状態です。

誤解のないように言っておきますが、高学歴の人すべてが知頭で仕事をしているわけではありません。むしろ、多くの高学歴の人は、自分なりに勉強法を工夫し、試行錯誤してきた人たちですから、その過程でしっかり地頭を使っています。

ただ、稀に記憶力だけで一流大学に合格した人がいて、その成功体験が裏目に出ると、地頭スイッチが入りにくくなります。

知識を覚えるだけで結果が出たから、「考える」という習慣が育たなかった。知識は豊富なのに、状況に応じて考えられない。このアンバランスさが「地頭が悪い」と言われてしまう原因です。

頭の固いベテランの「考えない習慣」

知頭だけで仕事をしている人は、若手に限りません。どの会社にも、頭の固いベテランがいます。

彼らも最初から頭が固かったわけではなく、若い頃は地頭を使って必死に考えていたはずです。

ところが、経験を積むにつれ、頭の中に「問いと答えのセット」が大量に蓄積されていきます。すると過去の事例を検索するだけで、そこそこ仕事が回るようになる。深く考えなくても、ある程度の正解にたどり着ける。その結果、いつのまにか「考えない習慣」が身についてしまうのです。

経験に頼るほど、地頭スイッチは入りにくくなり、未経験の案件が億劫になっていき、「今回の件、どうすればいいと思いますか?」と聞いても、「これは(経験上)無理だね」と即答する。そんなとき、「この人は経験の罠にハマッているな」と感じます。

あるヘッドハンターに聞いたところ、外部のベテランを幹部としてスカウトするヘッドハンティングは、入社後8割は活躍できずに失敗するといいます。

これも原因は同じ。前職で経験を積む中で地頭を使わなくなり、「経験はあるがノウハウはない」ベテランになってしまうのです。

優秀な弁護士でも地頭スイッチが入らない理由

また、意外かもしれませんが、その道の専門家と話していても、同じことを感じるときがあります。

弁護士は超難関の司法試験を突破した後、さまざまな案件を解決に導いた人たちですから、当然、地頭も高いレベルにありそうです。ただ、実際に相談してみると、「それは違法」「それは適法」と即答されることがあります。

その判断は、多くの場合、過去の判例に基づいています。
日本の法制度では、判例が「準ルール」として機能しているため、弁護士の頭の中には、判例という膨大な「問いと答えのセット」がストックされています。

つまり、その場では、検索によって答えを出しているのです。

ところが、こちらから「今回のケースは、××の点で過去の判例とは条件が違いませんか?」と指摘すると、「たしかに……もう一度検証しましょう」と考え始めます。
この瞬間、地頭スイッチが入ったとわかります。

数多くの事例を知っているほど、人は即答しやすくなる。それは強みでもありますが、同時に深く考えなくなる危険性もはらんでいます。

経験は、使い方次第で思考を加速させる武器にもなれば、思考停止を引き起こす装置にもなる。

だからこそ大切なのは、経験があるかどうかより、必要な場面で地頭スイッチを入れられるかどうかなのです。