笑顔で話すベテラン社員と若手社員写真はイメージです Photo:PIXTA

役職定年で肩書を失い、定年後には給与が半分以下――。会社員として長年積み上げてきた実績が、ある日を境に「なかったこと」のように扱われる。そんなとき、「自分にはもう価値がない」と感じてしまう人は少なくない。だが、本当に失ったのは自分の価値なのだろうか。定年前後に訪れる「焦り」の正体と、肩書や給与に左右されず、自分の価値を見つけ直すための意識転換とは。※本稿は、経営コンサルタント・僧侶の安永雄彦『定年で終わる人、終わらない人 豊かに生きるための5つの智慧』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

50代後半から職場の
空気が変わり始める

 50代の後半に入ると、多くの人が似たような違和感を覚え始めます。

 仕事が急にできなくなるわけではありません。体力も気力も、まだ十分にあります。判断力も、経験値も、むしろ若い頃より安定しています。少なくとも自分ではそう感じています。

 にもかかわらず、職場の空気がどこか変わったように思える瞬間が、確実に増えていきます。55歳前後のポストオフ(役職定年)あたりに特に如実に感じるようになるものです。自分ではいつもと変わらず努力しているつもりであっても、周囲の自分への期待や反応が変わっていくように感じられるのです。

 たとえば、定例会議での席順が、少しだけ後ろになります。自分より年代の若い役職者が上位の座席に自然と座るようになります。発言を遮られることはありません。むしろ丁寧に聞いてもらえています。しかし、意見を求められる回数は明らかに減りました。自分が少しずつ周囲から期待されなくなっていることをうっすらと感じ始めます。

 重要な案件の説明や、新しいプロジェクトの立ち上げは、いつの間にか若い後輩の管理職が中心になって担うようになっています。このあたりは自分の得意分野なので、必ず意見や見解を求められるはずだと思っていても、誰からも情報が伝わってきません。相談も自然と少なくなり、やがて来なくなります。