模擬面接で、私が質問をし、Iさんが答える。答えがずれたら即座に止めて、「今の質問は何でしたか?」と確認する。このトレーニングを繰り返しました。

 こういう方へは、やんわりとたしなめますが、なかなか理解されない方が多いように思います。自分の置かれている立場を、まずは理解すること、聞き手の質問に誠実に答えること、謙虚に自分の業績を説明して、決して自慢話に聞こえないように具体的な数字をさりげなく入れることをアドバイスさせていただくのが常でした。

 理解される方は、こうしたアドバイスを受けたすぐ後から態度を変えられます。しかし、怪訝な表情で、「いや、私の話を最後まで聞いてもらえれば理解してもらえるはずです」と、滔々と持論を述べ続ける方もおられました。

 どちらが転職してうまくいくかは、明白です。

失敗を認めた元部長は
本社の常務に返り咲いた

 あるとき、経営コンサルタントをしていた私のところにキャリア相談に来られた方がいました。日本の有名な消費財の会社の部長さんでした。

 入社以来経営企画を中心にキャリアを積まれてきて、アメリカの有名ビジネススクールにも留学しています。レジュメには、同期の中でトップグループで課長に昇格して、部長になったと誇らしげに記述されています。どこの会社に転職してもしっかりやっていけるとの自信にあふれていました。

 しかし、そうしたご自身の自信とは裏腹に、現在のポジションは、明らかに主流の経営企画部長を外され、管理本部付担当部長という一種の閑職についていたのです。私がその異動の理由を聞いても、あまりはっきりしたことを説明されませんでした。何か隠している雰囲気が明白で、不審に思いました。

 私からは、会社内で何らかの失敗があったのであればそれは明確に説明する必要があるし、逆に思い切った政策実行上の失敗の責任をとらされたのであれば、それはダメージではなくて立派な実績になりますよと説明しました。

 その方は、程なくして、関連の子会社の社長となって出向されました。そして、その会社の再建がうまくいき、3年後に本社の常務として復活されました。

 あとから、その辺りのいきさつを聞いたところ、自分の限界を認め、失敗を受け入れて謙虚になることができたことにより、部下との関係も改善して、子会社の再建もうまくいったそうです。

 このケースが示すのは、過去の成功体験への執着、「エリートである自分はこうあるべき」という固定観念を手放したとき、初めて新しい可能性が開けるということです。