米オープンAI(人工知能)が開発した「チャットGPT」のアプリのアイコン(右)。左は中国の「ディープシーク(深度求索)」が開発したアプリのアイコン米オープンAI(人工知能)が開発した「チャットGPT」のアプリのアイコン(右)。左は中国の「ディープシーク(深度求索)」が開発したアプリのアイコン Photo:JIJI

オープンAIは9月28日、10月に予定していた新モデル「GPT-6.1 Astra」の公開を見送ると明らかにした。ユーザーが許可した範囲で行動することや、実施した作業を適切に報告することなどが、同社の基準を満たさなかったためだ。

こうしたオープンAIの判断は同社にとって安全性を担保する前進なのか、それとも開発の遅れをもたらす後退なのか。ソフトバンクの孫正義氏をはじめとするオープンAIの投資家は、今回の決定に納得するのか。ベンチャーキャピタルANOBAKAの創業者で、デジタル分野に精通する長野泰和氏に「オープンAIの公開延期判断が本当に意味するところ」「核冷戦より怖いAI冷戦」「AI冷戦で日本が取るべき戦略」などについて話を聞いた。(長野 泰和 ANOBAKA 代表取締役社長/パートナー、構成/ダイヤモンド・ライフ編集部)

「AI開発競争」は
止まることが許されない

 AI開発競争において、開発を停滞させるという選択肢は、そもそもないと思っています。

 中国がAI開発を進めているのに、オープンAIをはじめとする米国企業だけが立ち止まれば、中国に取られてしまう。大きな時間軸で見れば、これは「止まることが許されないゲーム」なのです。

 ですから、今回の公開見送りについても、私は「極めて一時的な現象、もしくはポーズに近いのではないか」と感じました。開発競争から降りるという判断とは見ていません。

石破茂首相と面会後、記者団の取材に応じる孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長(左)とアルトマン米オープンAI最高経営責任者(CEO)=3日午後、首相官邸すでにオープンAIに多額の投資をしているソフトバンクGの孫正義氏は「最新モデル公開延期」の判断に納得しているのか?次ページで詳しく解説しています Photo:JIJI

 もちろん、安全性への懸念や世の中の声を無視していいわけではありません。ただ、大きな競争戦略の中では、中国に勝つのか、負けるのかという問題のほうがはるかに重要です。

 構造として非常によく似ているのが、かつての米ソの核開発競争です。

 ソ連が開発を続けている以上、米国もやめられない。中国がAI開発をやめない限り、米国だけがやめるわけにはいかないという構図は、同じだと思います。

 ただし、ここで「だから今回の判断は間違いだ」と言い切ると、一つ大事な視点が抜けてしまいます。

 オープンAIに投資する孫正義さんの立場から見ると、開発を急がせることだけが正解というわけではありません。投資の成否を考えるなら、他にも目を向けるべきリスクがあるからです。