ハノイの「鉄道大増設」は
2030年に間に合うか

 話が脱線した。3号線はフランスのODAを中心に、同国の鉄道車両メーカーアルストムも参画して整備した。基本的な規格は2A号線と同じであり、やはり駅が大きい。こうなると設計を取りまとめた中国、フランスの影響ではなく、ベトナム政府の意向(共産主義的・権威主義的な建築)なのかもしれない。

 ただ、ベトナム最大の都市ホーチミンで日本企業が参画した1号線は(写真を見る限りだが)いかにも日本的な都市高速鉄道で、過大な設備という印象は受けない。建設費で見るとどうだろうか。

 日本貿易振興機構(JETRO)やベトナム政府の資料を参考に、ハノイ2A号線、3号線(未開業区間含む)、日本が参画するホーチミン1号線、建設中のハノイ2号線を比較すると次の通りだ(いずれも営業線総延長のみで計算)。

ハノイ2A号線(中国ODA)
 総延長 13.1キロ
 建設費 約8.6億ドル
 キロあたりの建設費 約6400万ドル

ハノイ3号線(フランスODA、未開業区間含む)
 総延長 12.0キロ(地下区間4キロ)
 建設費 約14億ドル
 キロあたりの建設費 約1億1700万ドル

ハノイ2号線(日本ODA、建設中)
 総延長 10.9キロ(地下区間9キロ)
 建設費 約14億ドル
 キロ当たりの建設費 約1億2800万ドル

ホーチミン1号線(日本ODA)
 総延長 19.7キロ(地下区間2.5キロ)
 建設費 約14億ドル
 キロあたりの建設費 約7100万ドル

 各資料を突き合わせたものであり、それぞれの数字が同条件である保証はない。また都市高速鉄道の事業費は、必要な輸送力(列車本数)、トンネル延長、地質や用地取得など工事の難易度、建設期間などの条件によって大きく変わるため、単純比較は無意味である。

 それを前提にしても、全線高架のハノイ2A号線とホーチミン1号線のキロあたり建設費が大差ないこと、ハノイ3号線より地下区間が倍以上の2号線のキロ当たり建設費が大差ないことを考えると、既設の2A号線、3号線の設計には疑問が残る。独立採算が原則の日本は、良くも悪くも必要最低限の合理的設計で鉄道を整備してきた。そういった強みも出ているのかもしれない。。

 費用、工事の効率は今後、さらに重要になる。ハノイ市は今年6月、「1号線」、「2号線(延伸部)」、「8号線」、「10号線」、「14号線」の5路線計303キロの建設工事に着手。総事業費約1300兆ドン(約7.9兆円)を投じて、2030年に完成させる計画だ。

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 あと4年弱でできるのか。確かに日本も、高度成長期は20~30キロの路線を5年程度で開業させていた。共産主義国ベトナムとはいえ、建設を強権的に進められるわけではない。2A号線と3号線も5年程度で開業予定だったが、実際には用地取得や工事の遅れで10年以上を要した。2027年開業を予定する3号線延伸区間も工事が遅れているとの報道もある。

 前述の「ハノイ首都マスタープラン」は、2035年までに約500キロ、2045年までに18路線約979キロの路線網を整備するとしており、工事の主体も今後は、ODAに紐づいた外国企業から、ベトナム最大級のコングロマリット「VinGroup(ビングループ)」へと移っていくようだ。

 都市交通の改善は喫緊の課題だが、果たして目論見通りに進むだろうか。次は開業目標の2030年頃にハノイを再訪し、あわせてホーチミンも視察してみたい。