「健康のために食べすぎないようにしよう」と思っていても、つい甘いものや脂っこいものに手が伸びてしまう。お腹がいっぱいのはずなのに、なぜか「もっと食べたい」と感じることもある。実は、こうした行動には、人類が長い進化の歴史の中で獲得してきた「生き残るための仕組み」が深く関係している。私たちが身体に必要な量以上に食べたくなってしまう理由を『すべて本能のせい』から伝える。(ダイヤモンド社書籍編集局)
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「食べすぎてしまう」のは意志が弱いから?
ダイエットをしようと決意したのに、ついお菓子を食べてしまう。
健康のために食生活を改善しようと思っていても、目の前においしそうなものがあると、なかなか我慢できない。
そんな経験はないだろうか。
私たちは、こうした行動を「自分の意志が弱いから」「自制心が足りないから」と考えてしまいがちだ。
しかし、そもそも人間は、なぜ高カロリーな食べ物にこれほど惹かれるのだろうか。
実は、その理由を知るためには、現代の食生活ではなく、人類が生きてきた長い進化の歴史に目を向ける必要がある。
人間の身体は「健康」よりも「生き残ること」を優先してきた
『すべて本能のせい』では下記のように解説されている。
かつての私たちが生きていた狩猟採集時代は、食べ物を常に手に入れられるわけではなく、次にいつ食べられるか分からない状況が続いていました。
そのため、高カロリーで栄養豊富なものを優先的に食べ、できるだけエネルギーを蓄えられる個体の方が生き残る確率が高かったのです。
こうした「高カロリーのものをたくさん食べてエネルギーを溜める」というメカニズムは、脳内の報酬系、特にドーパミンによって強化されています。
糖質や脂質を摂ると、脳の報酬系が活性化し、その経験を価値の高いものとして記憶するため、「もっと食べたい」「また食べたい」とその行動を繰り返すようになるのです。
また、インスリンなどのホルモンが空腹感や満腹感を調整し、エネルギーのバランスを維持しようともしています。
近年では、食欲や体重の調節に関わる遺伝子も数多く見つかっています。
高カロリーな食べ物に惹かれやすい傾向は、単に性格や意志の問題ではなく、脳の報酬系やホルモン、さらには遺伝子レベルの仕組みにも支えられています。
しかしこれらのシステムは「栄養が不足する環境」を前提につくられており、豊富な食料がある時代に対しては、精密に対応できる仕組みではないのです。
かつては「生き残るための仕組み」だった
かつての人類にとって、食べ物を手に入れられる機会は限られていた。
だからこそ、食べられるときにできるだけ多くのエネルギーを摂取し、蓄えておくことには、生き残るうえで大きな意味があった。
しかし、現代では状況が大きく変わっている。
コンビニやスーパーに行けば、いつでも高カロリーな食べ物を手に入れられる。お腹が空いていなくても、おいしそうな食べ物を目にする機会は少なくない。
それでも、私たちの身体には、食料が不足していた時代に役立っていた仕組みが残っている。
つまり、かつては生存に有利だった仕組みが、現代では食べすぎにつながることがあるのだ。
「食べたい」という欲求を理解することが大切
もちろん、食べすぎには生活習慣やストレス、体調など、さまざまな要因が関係している。
だからこそ、食欲を抑えられなかったときに、すべてを意志の弱さのせいにする必要はない。
私たちの脳は、必ずしも「健康にとって最善の選択」をするようにつくられているわけではない。
生き残るために獲得してきた仕組みが、現代の豊かな食環境では、かえって健康的な食生活を難しくすることがある。
「なぜ食べたいのか」を生物学の視点から理解することは、自分自身の食欲との付き合い方を考えるきっかけになるかもしれない。



