研究室で実験や研究に取り組む若手研究者たち写真はイメージです Photo:PIXTA

高度医療、地域への医師派遣、研究、教育など、多くの役割を担う大学病院。ところが、その現場を支える医師たちの待遇は、世間が抱く「医師は高収入」というイメージとはかけ離れている。さらに、医師としてのキャリアを積む過程には、あまり知られていない負担がある。※本稿は、小児外科医の松永正訓『大学病院の正体 手術、人事、教育、研究のすべて』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。

国立大学病院の重責を
非正規の医師が支える

 日本は世界的に見て人口比で病院の数が多い。厚労省の調査によると、2024年3月末の時点で全国に8097施設ある。このうち国立大学病院数は、わずか42施設で、およそ0.5%に過ぎない。

 そんな少ない施設が、多様で重い任務を担っている。国立大学病院は、高度救命救急センターの32%を、脳死臓器移植の59.8%を担っている(2024年、日本経済新聞)。

 医療過疎問題に対しては文科省が国立大学医学部に地域枠を設けて医学生を確保しているが、実際に医師の地域派遣を行っているのは大学病院の医局である。

 臨床だけに限らず、研究や教育にも力を注いでいる。こうした重責を果たしてくることができた理由は、大学病院の医師たちの強い責任感によると言えるだろう。しかしこれが持続可能かどうかは検討した方がいい。

 国立大学病院のマンパワーの源泉は、日給制で働いている医員というポジションの医師たちにある(編集部注/研修医2年間と専攻医3年間の期間を終えた医師は、専門医の資格を取るために大学病院や基幹病院の臨床現場で専門的な知識と技術を積み上げる必要がある。こうした医師を、大学病院は非正規職員の「医員」として雇用している)。医員への待遇改善は喫緊の課題である。年収300万円程度では、過酷な仕事とあまりにも釣り合わない。結果、医員は(助教以上もだけど)、アルバイトで生活費を稼ぐことになる。