俳優の東出昌大俳優の東出昌大 Photo:SANKEI

「害獣だから殺す」「かわいそうだから救う」――その境界は、どこにあるのか。俳優の東出昌大は、山での狩猟生活のなかで、罠にかかったハクビシンの命を奪う一方、皮膚病に苦しむタヌキを救おうとした。人間の都合で命を選別することへの葛藤と、野生動物に情が芽生えたときに突きつけられる、割り切れない現実とは。※本稿は、俳優の東出昌大『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

人間の暮らしを守るため
「害獣」と呼ばれる命

「ハクビシンかかってるけど、いる?」

 朝7時、同じ猟友会のベテラン猟師、仲澤さんからのLINEで起きた。寝ぼけ眼にタブレットの液晶画面は明るい。布団を頭から被りながら、朝一で生き物を殺すかどうか考えた。

 白鼻芯。名前の通り白い筋が額から鼻先にかけてスッと通ったジャコウネコ科の動物。長い尻尾はバランスを取るのに適しているのか、小動物の中でも曲芸師のように身のこなしが上手で、電線の上をネコバスのように走ることもある。甘い果樹を好んで食べる美食家で、家の屋根裏に棲みついたり、ビニールハウスに穴を空けたりすることもある。

 農水省の調査によると、その被害額は令和4年だけでも、全国で3億6000万円超え。人間の生活環境を守る為に、時として野生動物は“害獣”と呼ばれ、狩猟免許を持った猟師が駆り出される社会があり、殺された動物の9割が施設で廃棄される現実がある。

 私の到着が遅れれば遅れるほど、罠にかかったハクビシンは逃げ出そうと鋼鉄製の罠に体を打ち付け、怖く、痛い思いをするはずだ。鬱血すれば肉も悪くなる。「このハクビシン、血がまわっちゃってちょっと臭いね」は、殺された命に向けられる言葉としては、あまりにも残酷だ。