2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
見えないコストが積み上がっている
職場では、ときどき「しょうがない」という言葉が使われます。
人が足りないから、今だけ少し頑張ってもらう。
納期が厳しいから、誰かに多めに引き受けてもらう。
関係がこじれそうだから、今回はこの人に譲ってもらう。
もちろん、仕事には踏ん張りどころがあるのも事実でしょう。
ですが、誰かの我慢によって成り立っている状態を、「うまく回っている」とは考えないほうがいいと思っています。
なぜなら、その我慢は消えたのではなく、見えないところに積み上がっているだけだからです。
問題を先延ばしにしているだけ
たとえば、本来二人でやるべき仕事を、一人が無理をして終わらせたとします。
期限には間に合います。数字だけを見れば、問題はありません。
でも、その人が遅くまで残っていたことや、別の仕事を後回しにしたこと、翌日の集中力が落ちたことまでは、数字には表れないかもしれません。
人間関係でも同じです。
意見がぶつかるたびに同じ人が譲れば、その場は丸く収まります。
しかし、本人の中には「どうせ言っても変わらない」という諦めが積み重なっていくでしょう。
つまり我慢は、問題を解決しているのではなく、問題が表に出る時期を先延ばしにしていることが少なくないのです。
我慢できる人ほど、突然いなくなる
やっかいなのは、我慢している人ほど、周囲からは問題がないように見えることです。
頼めばやってくれる。文句も言わない。大きなトラブルも起こさない。
だから組織は、その人の我慢を「余力」だと勘違いします。
そして、さらに仕事を任せる。
ところが本人の中では、少しずつ限界に近づいていることがあるのです。
ある日、急に休む。異動を希望する。あるいは退職する。
周囲は「突然だった」と感じます。でも本人にとっては、突然ではありません。
見えなかっただけです。
我慢は仕組みではない
組織を見るときは、成果や進捗だけでなく、その成果が何によって支えられているのかを見る必要があります。
毎回、誰かが残業して間に合わせていないか。
いつも同じ人がギリギリの状態になっていないか。
「今だけ」が何か月も続いていないか。
そこに気づいたら、「もう少し頑張ってもらおう」ではなく、仕事の量や進め方、意思決定の仕組みを見直す。それが必要です。
誰かが我慢すれば、職場はしばらく回ります。
でも、我慢は仕組みではありません。
誰かの我慢に頼らなくても回る状態をつくることこそ、組織づくりの本質です。
目の前の仕事が終わっているから大丈夫、と考えない。
その裏で誰かが払い続けている「見えないコスト」に気づける組織のほうが、壊れない強い組織なのです。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太