2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

組織の違和感我慢Photo: Adobe Stock

見えないコストが積み上がっている

 職場では、ときどき「しょうがない」という言葉が使われます。

 人が足りないから、今だけ少し頑張ってもらう。

 納期が厳しいから、誰かに多めに引き受けてもらう。

 関係がこじれそうだから、今回はこの人に譲ってもらう。

 もちろん、仕事には踏ん張りどころがあるのも事実でしょう。

 ですが、誰かの我慢によって成り立っている状態を、「うまく回っている」とは考えないほうがいいと思っています。

 なぜなら、その我慢は消えたのではなく、見えないところに積み上がっているだけだからです。

問題を先延ばしにしているだけ

 たとえば、本来二人でやるべき仕事を、一人が無理をして終わらせたとします。

 期限には間に合います。数字だけを見れば、問題はありません。

 でも、その人が遅くまで残っていたことや、別の仕事を後回しにしたこと、翌日の集中力が落ちたことまでは、数字には表れないかもしれません。

 人間関係でも同じです。

 意見がぶつかるたびに同じ人が譲れば、その場は丸く収まります。

 しかし、本人の中には「どうせ言っても変わらない」という諦めが積み重なっていくでしょう。

 つまり我慢は、問題を解決しているのではなく、問題が表に出る時期を先延ばしにしていることが少なくないのです。

我慢できる人ほど、突然いなくなる

 やっかいなのは、我慢している人ほど、周囲からは問題がないように見えることです。

 頼めばやってくれる。文句も言わない。大きなトラブルも起こさない。

 だから組織は、その人の我慢を「余力」だと勘違いします。

 そして、さらに仕事を任せる。

 ところが本人の中では、少しずつ限界に近づいていることがあるのです。

 ある日、急に休む。異動を希望する。あるいは退職する。

 周囲は「突然だった」と感じます。でも本人にとっては、突然ではありません。

 見えなかっただけです。

我慢は仕組みではない

 組織を見るときは、成果や進捗だけでなく、その成果が何によって支えられているのかを見る必要があります。

 毎回、誰かが残業して間に合わせていないか。

 いつも同じ人がギリギリの状態になっていないか。

「今だけ」が何か月も続いていないか。

 そこに気づいたら、「もう少し頑張ってもらおう」ではなく、仕事の量や進め方、意思決定の仕組みを見直す。それが必要です。

 誰かが我慢すれば、職場はしばらく回ります。

 でも、我慢は仕組みではありません。

 誰かの我慢に頼らなくても回る状態をつくることこそ、組織づくりの本質です。

 目の前の仕事が終わっているから大丈夫、と考えない。

 その裏で誰かが払い続けている「見えないコスト」に気づける組織のほうが、壊れない強い組織なのです。